Review 2021-22
狩猟を始めて、5回目のシーズンを振り返ってみたい。
獲ったエゾシカは23頭。
前シーズンに比べると2割ほど減った。
12月半ばまではヒグマに集中していたのが主な理由で、
十分な猟果であったと思っている。
内訳は、
雄が9頭、雌が14頭。
流し猟で1頭、忍び猟で22頭。
大きく、忍び猟に舵を切ったシーズンだった。
北海道の師匠F氏が常々言っている、
「何頭獲った、とかはどうでもいい。
大事なのは、どう獲ったか、だけだ」
との考え方は深く私の心に根を下ろしており、
結果、自ずと忍び猟が多くなっていった。
自分の足で獣道を歩く。
風に晒され、吹雪を喰らう。
ヘトヘトになりながら、ようやく鹿を見つけて撃つ。
かじかんだ手を必死に温めながら解体する。
肩に食い込む鹿の重さに耐えながら
また長い道のりを歩いて戻る。
きちんと辛さを味わってこそ、
感じられる喜びがあり、
体で学ぶ教訓がある。
そうやって獲った肉は、
やはりべらぼうに旨い。
疲労と空腹が、充足感を倍増させる。
そして鹿へのリスペクトこそが、
どんな調味料よりも肉の味を引き立てるのだ。
ヒグマが冬眠した後は、狩猟同行体験を積極的に行った。
今期、新たに鹿狩りを体験していただいたのは
21人(内新人ハンター1名)。
内訳は、小学生1名、大学生3名、社会人17名。
男女別では、男性11名、女性10名、であった。
先シーズンからのリピーター、
また今期だけで複数回参加していただいた方も多く、
のべ人数では44名をお連れした。
その多くが、私の無二の親友となっている。
狩猟がもたらしてくれるのは、肉だけではないのだ。
授業や講演会にも力を入れた。
小学校と高校で1回ずつ。
講演は、オンラインサロンで1回、店舗で3回。
狩猟体験も、授業や講演も、
全てが私の記憶に刻まれており、
皆様からの、命のこもったご感想は
もはや生き甲斐という言葉を超え、
自分がこの世に生を受けた意義となりつつある。
そしてなんといっても、最大の出来事はヒグマを獲ったことだ。
まがりなりにも、命懸けで引き金を引く、という体験を経て
私の中で新しい扉が開いた。
なぜ山神は、ハンターとして、まだまだ未熟な私に、
最高の獲物であるクマを届けてくださったのか。
私がいただいたのは、肉だけではない。
命のことについてきちんと伝えてゆく、という使命こそを
授けられたのだと思っている。
古来、狩猟採集の過程の先には、常に分配があった。
かつての猟師が、集落の皆に肉を山分けにしたように、
自然との距離が拡大の一途を辿る現代社会においてシェアすべきは、
狩猟の実体験や、地に根ざした考察であろう。
それこそが私の使命。
果たすべき使命を持って生きる。
なんと素敵なことか。
深い雪の中を駆ける雄鹿のように力強く、
自分の命を全うするために、突き進むのみ。
もはや私に、迷いはない。