無題

【読書】江戸は言うほど寒村じゃなかった

 結構世の中探してみると有るもので、江戸幕府以前の江戸についての本も意外と多くて、さらに増えつつある。確かに江戸の大普請はすごいのだが(なにせ入り江一つ埋め立てて今の皇居前~有楽町~新橋あたりに至る広大な土地を作っているところから始まる。詳しくは後述の本にて)決してその前が寒々しい荒野だったという訳ではないのだ。
 決して徳川家康は損なところを貰い受けたのではない。ということでまず古代~中世~江戸幕府までを前半で語り、後半で江戸の大普請をがっつり説明するこちらの本を紹介。

『江戸はこうして造られた』元々江戸の大普請を知ろうと読んだのですが、鎌倉時代の江戸氏が大福長者と呼ばれ、没落していった過程や室町時代の太田道灌の見た夢と円覚寺の寺領についての考察、特に円覚寺の寺社領や港湾使用料の上がりなどについても詳細に載っていて恐れ入りました。自分が円覚寺文書に特に興味を持ったきっかけでもある一冊。
 著者の鈴木理生先生は中央区図書館の郷土室だよりも書かれていて、こちらに追悼特集があります。無料で読んでいいのかと思うくらいの充実。

 江戸って別に寂れた寒村でもなんでもなく、敵味方(当時は江戸内海と呼ばれた東京湾には、古くは関東管領vs古河公方、後には後北条氏と小弓公方勢などの防衛ラインとなった利根川が流れ込んでいたのです)の別なく様々な商品が流れ込む流通集積地でも有ったのですな。円覚寺は江戸前嶋という一帯(だいたい日本橋~京橋近辺ですかね……?)を押さえていたり、神奈川湊の徴収とかも(矢野氏やいわゆる総社長尾氏を通じて)押さえていたので意外に海洋系のつながりもあったのですね。

 で、そんなまだ円覚寺領だったころ、江戸湊の一角から永正年間と見られる梅毒患者の人骨が出ている、と鈴木先生の「江戸はこうして造られた」にあるものですから、こちらの本(正確には原題となる「江戸八百八町に骨が舞う」)に惹かれて読み始めました。こちらは詳しくはこっちのノートをどうぞ。

 江戸内海といえば戦国期には北条と里見で覇権を争った海でもあります。房総半島を臨む沿岸には「半手」と呼ばれる双方の領主に年貢を納めて略奪行為から村を守ろうとした地域もあったほど。そうした海上の派遣争いは豊臣政権によって後々禁止されてしまうわけですが、そこまでの流れを知るならこちら。

 カラフルかつ、こちらも割りと見開きとか数ページで話がまとまるので大変読みやすい。『正伝 岡田以蔵』や『図説 室町幕府』で話題の戎光祥出版さんです。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?