カウンターテナーの美しい歌声!

カウンターテナーの歌声を聞いたことありますか?

 変声を過ぎた男性が裏声(ファルセット)や頭声を使って、女声パート(アルト、メゾソプラノ、ソプラノ)あるいは女声に相当する音域を歌うことを指します。

 ウイーン少年合唱団に代表されるようなボーイソプラノや、バロック時代にみられた変声前に去勢(これは聖職者とも関連する)することで高音域を保つカストラートとは区別されます。

 モーツァルトのオペラにはカストラート(去勢された男性ソプラノ)がまだたくさん存在していて、人気歌手として主役を張る歌手も多かったのですが、その後に一気にカストラートの需要は減少していきます。モーツァルト作品でも後期のウイーン時代のオペラにはほとんど出てこなくなり、最晩年の1791年に宮廷から依頼されたクソまじめな皇帝万歳オペラ「ティトゥースの慈悲」K.621以外は登場しません。フィガロの結婚のケルビーノはボーイソプラノか、ボーイッシュな若いソプラノが想定されていましたので、それとは異なります。

 さて、そんなカウンター・テナーの歌ですが、皆さんも聞いたことはあると思います。
米良美一さんの歌った「もののけ姫」の主題歌とか...

 もともと西洋音楽は宗教から始まっていて、ミサ曲を歌うソプラノも女子禁制であった教会で歌われるものでしたので、男性が担っていました。その名残が宗教音楽にもあったというわけですね。

 今回紹介するのはペルゴレージの名曲「スターバト・マーテル」です。

 ちなみにスターバト・マーテル(ラテン語: Stabat Mater、「悲しみの聖母」「聖母哀傷」)は、13世紀に生まれたカトリック教会の聖歌の1つだそうですが、中世の詩の中でも極めて心を打つものの1つであり、わが子イエス・キリストが処刑となった際、母マリアが受けた悲しみを思う内容となっています。

 この詩には中世以来、多くの作曲家が作品を残しています。中でもパレストリーナ、ヴィヴァルディ、ハイドン、ロッシーニ、ドヴォルザークなどなどそうそうたる顔ぶれですね。

さて、ペルゴレージのスターバト・マーテルは全体で40分以上の演奏時間となりますが、今回は、とにかくその第1曲目を聴いてください。
男女のソプラノが織りなすハーモニーは「美しいとはこの曲のことだ」と思わせます。
悲しい鼓動のようなシンプルな伴奏に支えられて、伸びやな悲痛感ただようメロディー。
 古今の宗教音楽の中でも稀にみる名曲の一つです。

 紹介している映像では華やかさのある美声と超絶的な技巧を持ち、バロックの声楽曲の解釈で高い評価を受けているフランスのカウンターテナー歌手、フィリップ・ジャルスキー(1978年生)の歌声です。

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