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モーツァルトとベートーヴェンの出会い

フンメルノート
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【DTM】モーツァルト/フーガ(未完:マクシミリアン・シュタードラーによる補筆完成版) ト短調 K.401 K6.375e

ベートーヴェンが初めてウィーンを訪れたのは1787年の3~4月。16歳半ばのことでした。

前年の歌劇「フィガロの結婚」につづき、自作のドン・ジョヴァンニに取り掛っている真っ最中の1787年当時のモーツァルト(1756~1791)は、このとき31歳の超有名人。ひっきりなしにモーツァルト家を訪れる人で溢れかえっていたであろうことが予想できます。そして前年に住み込みでフンメルも弟子入りさせています。

さて、そんな最中にベートーヴェンが初めてウィーンを訪れたのです。

この時モーツァルトとベートーヴェンは出会っているのか? というのは音楽史上最大のロマンの一つです。

いくつか読んだ本の中で言及されているところがあります。
子供用の伝記や漫画の伝記では盛大に出会ったりしてるところが描かれていますが、この両巨匠の出会いがどうだったのか、当時のモーツァルト側にもベートーヴェン側にも史料はなかったのですが、ベートーヴェンの死後、その伝記を編纂したオットー・ヤーンが聞いたエピソードに下記のようなものがあってそれを伝記の資料に加えたことに出会いのシーンが伝えられることとなったようです。

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モーツァルトの家を訪ねたベートーヴェンは、求められて何かの曲を弾いた。それを聴いたモーツァルトは、『うん、うまく弾けた。でも君はこの曲ばかり練習してきたのではないのかね?』と幾分冷たい口調でほめた。そこでベートーヴェンはテーマをください、と頼み、モーツァルトはそれを与えた。ベートーヴェンはそれをもとに、尊敬する巨匠の前で熱を込めて即興演奏を繰り広げた。モーツァルトは目をみはり、興奮して隣室に行き、そこにいた友人たちに声をはずませて言った。『彼に注目したまえ。そのうちに彼はすごいものを世界に与えるだろう。』
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というものです。しかしベートーヴェンの死後30年後に出版されているので信ぴょう性はなくドラマチックに脚色された作り話ではないかと思っています。

ちなみにヤーンの伝記から引用してブログを書かれているかたがいらっしゃり、プログ記事を書かれてますのでご参考までに。
https://eiji-maru.com/sonatine/beethoven-life-6-mozart-mother


ただ、ベートーヴェンがウィーン留学中の滞在先や日々の行動ははっきりとは分かっていませんが、どこかでヨーゼフ2世の姿を見たことと、モーツァルトの演奏を聴いたことだけは、ベートーヴェン自身が語っています。しかしこれも出会った時のものなのかベートーヴェンがモーツァルトの演奏会などで聞いた感想なのかは不明ですし、どこにも書かれていません。

これは弟子のチェルニー(ツェルニー)の回想録の中にあります。
ベートーヴェンはチェルニーに『モーツァルトの演奏は見事だったが、ポツポツと音を刻むようでレガートな演奏ではなかった。』と語ったとのことです。

ベートーヴェンは終生、モーツァルトへの尊敬の念を持ち続けていたことは確かで、死の1年前にも、手紙に次のように書いています。

『私は常に自分を、モーツァルトの最大の賛美者の一人と考えており、命あるかぎりそうであり続けるつもりです。』

でもヤーンの残した逸話が現実であったらなあという夢を今でも持ち続けています。

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