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夜野綾
2023年8月31日 12:56
教会に辿りつけない。 彼は窓の外にぼんやり目を向けた。ホテルの窓からは石造りの街並みが見渡せる。教会の尖塔は街の真ん中に、壊れたベッドのスプリングのように突き出ていた。 風雨にさらされた灰色の街も教会も、それなりに無骨な美しさがある。だが彼は詩心もなければ、風景を紙に写し取る指もない。代わりに彼はこの二週間ずっと歩き回っていた。 いつか母の病院の待合室で見た雑誌の写真を思い出し、彼は有り金