選べるなら
「小さい頃のあなたは、いつも眉間に皺を寄せ哀しそうに不機嫌だった。本当に癖のある子だったのよ。」
「あのときのお前はいつもみんな囲まれて楽しそうだったのに、突然壊れたように何かに怒りだすから怖かった。」
選べるならやっぱり過去だよ。未来か過去なら僕は過去に戻りたい。物心つき初めた頃から思春期に入る頃くらいまでの過去。でもそれは、その時期にそれだけ多くの綺麗な思い出や楽しい記憶があったから、ってわけじゃない。むしろ逆でね。今でも思い返すと心が苦しくなって、どうしようもなくなって、ただ涙が止まらなくなる。そういう記憶ばかりだよ。
でもだからこそ、僕はあのときに戻りたいんだよ。だって僕には僕しかいないから。僕を救えるのは僕しかいないから。自分で自分を救ってやりたいんだよ。もちろん今からだって僕は僕を救えるけど、できることなら本当に辛かったあのときの僕の、その手を今の僕がしっかり握って、守ってあげたいんだよ。
それにあのときの僕は、自分が辛いかどうかも分かってなかったと思う。まあ当然だけど。自分がどれだけ危うくて、どれだけ不安定な生き方をしてるかなんて、全然知らなかったから。そして何よりも自分自身についてもね。
つまりさ、何かを変えるために過去に戻りたいんじゃないよ。戻ったところで、何にも変わらないけど、その変わらない苦しさをたった一人であのときの僕が抱え込むことのないよう、今の僕が会いに行きたい。ただそれだけ。だから過去に行ってみたい。
まぁこんな風にタイムマシンがあったらいいなってときどき思うよね。けど残念!物理学には完全に実証不可能な代物なんだ。時間の進みが遅くなることはあっても、時間が逆向きに進み出すことはないんだから。
だから実際のところ、僕が僕を救うためには、もっと現実的な方法を考えなきゃいけないね。そして最近は少しずつその糸口が見えてきてるような感覚があるんだよ。本当に微かだけどね。それを確かなものにできたときは、僕は君だって救えるのかも知れない。それが今の僕の目標であり夢だよ。
たぶん辛さや苦しさには2種類あってね。一つは”今まさに感じてる苦しさ”。まぁこれは当然だよね。人が苦しいっていうとき、たいていそれは”私は今苦しみを感じてます。”って意味なんだから、苦痛とは現在性の強い
でも二つ目があって、それは”振り返ったときに初めて気づく苦しさ”だよ。もちろん本質的には一つ目と変わらない苦しさだ
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