【企業経営理論#20】BCGマトリクス(PPM)
BCGマトリクス
今回は、” BCGマトリクス ”についてです。
BCGマトリックスは、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が1970年代に開発した、事業ポートフォリオを分析するためのフレームワークであり、PPM(Product Portfolio Managemnet)とも呼ばれます。
企業が複数の事業を展開している場合、それぞれの事業の位置づけや将来性を把握し、資源配分を最適化することが重要になります。
BCGマトリックスでは、市場成長率と相対的市場シェア率の2軸を用いて、事業を4つのカテゴリーに分類し、それぞれの事業特性に応じた戦略を検討することを可能にします。
2つの軸
市場成長率:その事業が属する市場の 成長率 を表します。縦軸に表示され、 高いほど市場の魅力度が高い とされます。
計算式:(当期の市場規模 - 前期の市場規模) ÷ 前期の市場規模 × 100 (%)相対的市場シェア:自社の市場シェアを最大の競合の市場シェアで割った値です。横軸に表示され、高いほど競争力が高いとされます。
計算式:自社の市場シェア ÷ 最大の競合の市場シェア
4つのカテゴリー
BCGマトリックスは、市場成長率と相対的市場シェアの2つの軸によって、以下の4つのカテゴリーに分類されます。
花形 (Stars)
高成長市場において高い市場シェアを持つ事業。
将来の収益源となることが期待されるため、積極的に投資を行い、市場シェアを拡大する戦略がとられる。
例:成長期の新製品、人気商品
問題児 (Question Marks)
高成長市場において低い市場シェアを持つ事業。
将来的に花形になる可能性を秘めているが、競合に勝てるかどうかは 不確実。
投資を行い、 市場シェアを拡大するか、撤退するかの判断が求められる。
例:新規参入した事業、開発中の製品
金のなる木 (Cash Cows)
低成長市場において高い市場シェアを持つ事業。
安定した収益を生み出す主力事業。
過度な投資は避け、収益を維持する戦略がとられる。
例:成熟期の製品、定番商品
負け犬 (Poor Dogs)
低成長市場において低い市場シェアを持つ事業。
収益性が低く、将来性も低い事業。
撤退するか、縮小するかの判断が求められる。
例: 衰退期の製品、競争力の低い事業
プロダクトライフサイクル(PLC:Product Life Cycle)
BCGマトリクスに関連する概念として、プロダクトライフサイクルがあります。
プロダクトライフサイクルとは、製品やサービスが市場に導入されてから衰退していくまでの、ライフサイクルを表す概念です。
製品の売上や利益の変化、顧客や競合の状況などを分析することで、それぞれの段階に適したマーケティング戦略を立てることができ、それをBCGマトリクスに当てはめることでより成功に導く戦略の策定に役立ちます。
プロダクトライフサイクルの4つの段階
プロダクトライフサイクルは、一般的に以下の4つの段階に分けられます。
導入期
製品が初めて市場に投入される段階。
認知度が低く、 売上も少ない 。
価格は高めに設定されることが多い。
マーケティングの重点は、 認知度向上と初期顧客の獲得。
競合は少ないか、存在しない場合が多い。
成長期
製品が市場に受け入れられ、売上が急増する段階。
利益も増加し始める。
競合が参入し始める。
マーケティングの重点は、市場シェアの拡大と顧客基盤の構築。
成熟期
売上増加が鈍化し、市場が飽和する段階。
競合が増加 し、価格競争が激化する。
マーケティングの重点は、差別化と顧客維持。
衰退期
売上が減少し始める段階。
利益も減少し、競合が撤退し始める。
マーケティングの重点は、コスト削減と撤退のタイミング。
各段階のマーケティング戦略
導入期
マーケティング目標:
認知度向上
初期顧客の獲得
マーケティング戦略:
広告
PR
プロモーション
販売チャネルの開拓
成長期
マーケティング目標:
市場シェア拡大
顧客基盤構築
マーケティング戦略:
製品改良
価格戦略
販売チャネルの拡大
ブランド構築
成熟期
マーケティング目標:
差別化
顧客維持
マーケティング戦略:
新製品開発
顧客セグメント
顧客ロイヤルティプログラム
衰退期
マーケティング目標:
コスト削減
撤退
マーケティング戦略:
価格引き下げ
販売チャネルの縮小
撤退戦略
プロダクトライフサイクルの活用
プロダクトライフサイクルは、以下の目的で活用されます。
現状把握:製品が現在、どの段階にあるのかを把握する。
将来予測:製品が今後どのように変化していくのかを予測する。
マーケティング戦略:各段階に適したマーケティング戦略を策定する。
製品開発:新製品の開発 や既存製品の改良を行うタイミングを判断する。
事業ポートフォリオ:複数の製品/事業を持つ企業が、事業ポートフォリオを管理する。
プロダクトライフサイクルの限界
すべての製品が4つの段階を明確に通過するとは限らない。
環境変化や競合の影響によって、ライフサイクルが変化する可能性がある。
正確な予測が難しい場合がある。
BCGマトリックスの活用
BCGマトリックスは、以下の目的で活用されます。
事業ポートフォリオの分析:各事業の位置づけと将来性を把握する。
資源配分の最適化:花形に投資し、金のなる木から資金を調達するなど、効率的な資源配分を行う。
事業戦略の策定:各事業の特性に応じた戦略(成長、維持、撤退) を策定する。
意思決定:経営陣が事業について議論し、意思決定を行うためのフレームワークとして活用する。
BCGマトリックスの限界
BCGマトリックスは製品=市場マトリクスと同様に、シンプルでわかりやすいフレームワークですが、限界もあります。
単純化:市場成長率と相対的市場シェアという2つの軸でのみ分析するため、現実の複雑なビジネス環境を十分に反映できない可能性がある。
主観性:市場成長率や相対的市場シェアの定義や測定方法には、主観が入る可能性がある。
静的な分析:分析結果は、ある時点における静的なものであり、 動的な変化を捉えるのが難しい。
まとめ
今回は、経営戦略策定に役立つフレームワーク、BCGマトリクスについてまとめました。
次回からは、各戦略について触れます。
復習問題
問題1:穴埋め問題
BCGマトリクスは、( ① )と( ② )の2軸を用いて、事業を4つのカテゴリーに分類する。
高成長市場において高い市場シェアを持つ事業は、( ③ )と呼ばれる。
高成長市場において低い市場シェアを持つ事業は、( ④ )と呼ばれる。
低成長市場において高い市場シェアを持つ事業は、( ⑤ )と呼ばれる。
低成長市場において低い市場シェアを持つ事業は、( ⑥ )と呼ばれる。
問題2:正誤問題
BCGマトリクスは、事業ポートフォリオを分析するためのフレームワークである。( ○ / × )
市場成長率が高いほど、市場の魅力度は低い。( ○ / × )
相対的市場シェアが高いほど、競争力は低い。( ○ / × )
花形事業は、将来の収益源となることが期待される。( ○ / × )
問題児事業は、安定した収益を生み出す主力事業である。( ○ / × )
金のなる木事業は、撤退するか、縮小するかの判断が求められる。( ○ / × )
負け犬事業は、積極的に投資を行い、市場シェアを拡大する戦略がとられる。( ○ / × )
問題3:組み合わせ問題
次のBCGマトリクスのカテゴリーと、具体的な例を正しく結び付けてください。
問題4:記述問題
BCGマトリクスの2つの軸を説明してください。
4つのカテゴリーについて、それぞれ説明してください。
プロダクトライフサイクルの4つの段階を説明してください。
BCGマトリクスを活用する目的を3つ挙げてください。
BCGマトリクスの限界を2つ挙げてください。
問題5:多肢選択問題
以下のうち、BCGマトリクスの「花形」に該当する事業の特徴として適切なものをすべて選びなさい。
a. 高成長市場 b. 低成長市場 c. 高い市場シェア d. 低い市場シェア e. 積極的に投資を行う
問題6:多肢選択問題
以下のうち、BCGマトリクスの「問題児」に該当する事業の特徴として適切なものをすべて選びなさい。
a. 高成長市場 b. 低成長市場 c. 高い市場シェア d. 低い市場シェア e. 撤退するかの判断が求められる
問題7:多肢選択問題
以下のうち、BCGマトリクスの「金のなる木」に該当する事業の特徴として適切なものをすべて選びなさい。
a. 高成長市場 b. 低成長市場 c. 高い市場シェア d. 低い市場シェア e. 安定した収益を生み出す
問題8:多肢選択問題
以下のうち、BCGマトリクスの「負け犬」に該当する事業の特徴として適切なものをすべて選びなさい。
a. 高成長市場 b. 低成長市場 c. 高い市場シェア d. 低い市場シェア e. 収益性が低い
問題9:記述問題
ある家電メーカーが、BCGマトリクスを活用して、事業ポートフォリオを分析する際に、どのような点に注意すべきでしょうか? 具体的な例を挙げて説明してください。
問題10:記述問題
プロダクトライフサイクルとBCGマトリクスを関連付けて、ある新製品の成長戦略を検討してください。
解答
問題1
① 市場成長率 ② 相対的市場シェア
③ 花形
④ 問題児
⑤ 金のなる木
⑥ 負け犬
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