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女湯の女の恥ずべき話


祖父が生きていた頃、嫌いだった祖父の台詞。

「女っていうのはね、綺麗に化粧しているけれど、汚い部分は隠しているだけだからね。女なんか臭くて、汚らわしい生き物なのよ。男の方が良い!」

祖父は潔癖で、絶対に猥談をしない人だった。


我慢ならない私はいつも、「女の私に言うのか、この男尊女卑ジジイ!(怒)」と言い返すのであった。



平日の夕方、地元の温泉銭湯に行った。
たまたまレディースデイで、割引などのサービスがあってラッキーだった。
しかし、なかなか不快な思いをした。

私は体格が良いので、目立たないように端のスペースで体を洗うのが常であった。その方が精神的にも楽だったのだ。
平日の、街から少し離れた場所ということもあって、客はまばらだった。
観光客らしい、西日本なまりの若い母親と息子が浴場に入ってきた。
その幼い息子は、なぜか広々とした洗い場のスペースを無視し、まっしぐらに私の隣のスペースに来てしまった。あろうことか、私のすぐ横の桶や椅子で遊び始める。
母親は何事もなかったかのように、その一つ隣のスペースに陣取った。
私はしばらく無視していたが、騒がしいのでスペースを代えた。
母親は、何事もなかったかのように振る舞っている。
すると、隣に誰もいなくなった途端、子供はより一層騒音を立てながら、けたたましく遊び始めたのである。


世の中には、「あら可愛い息子さんですね~!」と無条件に自分の子供を構ってくれる大人ばかりではないことを、子持ち様は知っておくべきである。
特に、このようなリラクゼーション施設では私のようなストレスを発散したいというお一人様がいるということを、理解すべきである。
そういった小さな認識の差異の積み重なりが、「子持ち様批判」に繋がるということを、どうか知っていただきたいものである。
私は、子連れの人に、最初からやっかみや敵対心を持っている訳ではない。
貴女方の子育てストレスと、我々お一人様の仕事のストレスは同等だ。
何故ならご存知のとおり、子育て休暇取得により空いた穴は、子育てしてない人たちの労働力で埋められるからである。


つまり、ここで静かに過ごすのは平等な公衆の権利ですよ!と言いたい。


近くで体を洗っていたご婦人が、「あらあなた、こちらへ移っていらっしゃったの」と言うように私を見ていた。

むっとしたが、気を取り直してサウナへ行く。
何を隠そう、デブスのくせにサウナ3セットはいけてしまう、ちょっとしたサウナーなのである。

入ると、お世辞にも広いとは言えないサウナ室に、涅槃仏のように、長々と横たわる初老婦人…しかも、備え付けのオレンジ色のサウナマットを己の体に合わせて敷き直し、汗だくの体を直接横たえているではないか。
最近このサウナも、着座用サウナマットの無料貸出しを始めたようだったが、そちらはまるで無視である。
少し驚いたが、影響のなさそうな場所に陣取る私。
老婦人はお構いなしに、宙へ足を広げたり伸ばしたりして、ヌーディストのようなポージングを決めまくる。

私は空気なのか。
 
あちゃー、今日はハズレだと思いながら、何とか1セット整い終わる。


そうして、再びサウナ室に入ると、先ほどの老婦人は逞しく居座っている。
同時に、さっき私が座っていたオレンジ色のサウナマットは、今度は足を組んで座っている老婦人のおみ足にふんずけられている。
さらに、その下の段のマットは何故か二枚折りになり、誰かの汗だくになって、投げ出されている。

もう、うんざり、がっかりだった。

老婦人はあまりの熱気にため息をつくと、私物のタオルを広げてサウナ室に置きざりにし、シャワーを浴びに出ていった。


脱衣場では、先ほどの母親が、片手で息子にドライヤーをかけながら、もう片方の手で別のドライヤーを使いながら髪を乾かしていた……。




私は旅行や温泉が好きで、全国各地の風呂に入っている。
マナーの悪い日本人女性客は、一定数遭遇する。存在する。
公衆浴場に来たことがないんだろうかと思うこともある。
そんな女性客を見かけると、恥を知れと思うと同時に、冒頭の祖父の台詞は、なかなか真理を突いているのではないかと思うこともある。


風呂上がりに素っ裸のまま、鏡台の前の椅子に座り、無料の化粧水をひたすら塗りたくるおばさん。
大声でパートナーとの性の話をする若い女性連れ。
インフィニティ温泉の静寂の中、ひたすら孫の名前を大声で呼び続け、ふざけて話しかける祖母らしきご婦人。
他の客がいる狭い浴場で、岩から沸く温泉に向かって祈りを捧げ、五体投地するようにオーバーフローで寝湯するご婦人。
使った備品を、使いっぱなしでそのまま放置する女性客。
グループでの狭い浴槽の長時間占領(延々と続く長話…)



しかも、それらの多くは、比較的スタイルが良いとか、普段は見た目がきれいで通っている人が多い気がしている。


一糸纏わぬ姿になり、化けの皮が剥がれると本性が出るのだろうか。
化ける必要がない、女性性の弱者のような私には、考えられない振る舞いをしている時がある。
何故なら私のような者は「行儀が悪い」「人の迷惑になるようなことはするな」と言われ、見た目が悪い分、周囲に気を使うことを強いられるからである。


女性性の勝者は、己の老廃物すら、他人には不快に思われないという認識があるのだろうか。

それは大きな間違いである。



化粧やファッションで隠せない場面においては、同じ人間、汚いものは汚いのである。


ちなみに、勿論マナーを守っている方もいるので、絶望しないでいただきたい。

私は数回に一度、或いはたまたま訪れた遠方の温泉地にて偶然、そのような迷惑行為に遭遇しては、ストレスを感じている。

男の見ていない女湯でそういった迷惑行為をしておきながら、美しく化粧をし、何食わぬ顔で己の恋人や夫に寄り添って帰っていくのかと思うと、同じ女性としては腹が立つやら情けないやらである。

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