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【前編】8/5開催「みんなで変えよう!日本の性犯罪規定における問題点」*イベントレポート*

8月5日、ヒューマンライツ・ナウ(以下、HRN)は、JANICグローバル共生ファンドの中間報告イベントとして、『みんなで変えよう!日本の性犯罪規定における問題点』を開催いたしました。

HRNで女性の権利問題に関わる声明や改正案の作成をしている教授1名及び弁護士5名が登壇し、現行の性犯罪規定の問題点と私たちが求める改正案を、事例を用いて解説しました。

イベントの様子を前編・後編に分けてお伝えいたします。ぜひ、最後までご覧ください。

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はじめに、伊藤和子事務局長は、2017年の性犯罪規定改正と残された課題、そして更なる刑法改正に向けたヒューマンライツ・ナウの活動を報告しました。

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伊藤事務局長は、現行の刑法性犯罪規定の問題点として、「無理やり性行為をされた」「意に反して性行為をされた」と被害者が訴えても、犯罪を立証するための証拠は不十分で処罰されない。強制性交等罪が成立するためには「暴行」または「脅迫」要件、準強制性交等罪が成立するためには「心神喪失」または「抗拒不能」要件を満たす必要がある。そして、行為者が相手の同意がないとわかっていながらも行為に及んだことを証明する必要があるということを指摘しました。

このような実態を変え、被害者を守れる法制度を実現するために、現在法務省で行われている刑法見直しの検討会に対して、共にに声を届けていって欲しい、と参加者に訴えました。

次に、中山弁護士雪田弁護士が、現在の刑法性犯罪規定の問題点とHRNの改正案を、事例とイラストを使って解説しました。(参考:「性暴力救援センター全国連絡会・2018年11月15日付法制審議会での刑法改正に関する審議についての要望書」掲載の不起訴事例、構成事例)

※ここからは性暴力の具体的な状況の説明・発言・描写を含みますので、フラッシュバックにご注意ください。

まず、中山弁護士が、暴行脅迫要件・性交同意年齢について事例と共にその問題点を説明しました。noteでは、イベントで取り上げた事例の一部をご紹介します。

【現行法第177条】
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

<事例1>
被害者Aと加害者Bは職場の同僚。
休憩中、BはAに突然プロポーズをする。
Aが冗談だと思って笑っていたら、Bがいきなりキスなどの性的な行為をしてきた。Aは驚いて別の部屋へ逃げ込んだ。

BはAを追いかけ、性的暴行がエスカレート。
挿入されそうになり、Aが「せめてコンドーム」と言うと、Bは一度その場を離れたが、結局買わずにすぐ戻ってきた。Aは恐怖で逃げられず、「やめて」「無理」と抵抗したが、無理やり口淫・性交された。腕や太ももにあざができた。

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犯行現場からBの体液が検出され、逮捕。
しかしその後、「嫌疑不十分」として、Bは不起訴になった。
担当検事は被害者に対して、「知らない人からでの課外でないと強姦は成立しない」「正常な性行為でもあざはできる」と説明したことから、暴行・脅迫の立証がない、同意の可能性があると判断されたことが考えられる。

現在の法律では、被害者が「やめて」「無理」と同意していないことを示していてもあざができるほどの強い力を使われても、「暴行」「脅迫」があったことを証明するには不十分。
「本当は同意していたのでは?」と推測されて不起訴になってしまう。

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HRNは、「同意のない性行為は犯罪」というルールの明確化のため、「不同意性交罪」の新設、「暴行・脅迫」要件を具体的化することを求めます。

【HRNが提案する改正案】
177条 不同意性交等罪・若年者性交等罪

1項 16歳以上の者に対し、その者の認識可能な意思に反して、性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」)を行った者は、不同意性交の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
2項 有形力の行使、脅迫、威迫、不意打ち、偽計、欺罔、監禁を用いて前項の行為を行った者は、前項の例による。
3項 前2項の性交等を16歳未満の者に対して行った者は、若年者性交の罪とし、6年以上の有期懲役に処する。但し、18歳未満同士で年齢差が2年以内の場合 は除く。

<事例2>
夜中0時頃、被害者Aは友人Tから付き添いを頼まれて、男子中学生S(Tが好意をもっていた)と待ち合わせた。Sは自身の先輩である加害者BとCを連れてやってきた。
S・B・Cは、Tに性交渉を迫った。しかし、Tが拒否したため、今度はAに対して一方的に「やろう」「3Pしよう」と性交渉を迫った。
※AはS・B・Cと初対面。

Aは「嫌だ」と断りつづけたが、B・Cはイライラした態度で足先を地面に何度も打ち付け、「やろうや!」「どうすんの!」とAに迫った。Aは、ヤンキー風で上級生であるB・Cに恐怖を感じた。3時間後、応じなければ帰してもらえないと思い、「やります」と答え、B・Cは無理やり口淫・性交した。

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Aが泣きながら両親に被害を告白し、事件が発覚。
Aが最終的に自分から「やります」と言ったこと、加害者が暴行・脅迫を加えていなかったことから、強姦罪ではなく青少年健全育成条例(みだらな性行為及びわいせつな行為の禁止)違反事件で捜査が進んだ
当時17歳の加害者Cは処罰対象にならず加害者Bとの民事訴訟も不成立に終わった。

現在の法律では、性交同意年齢は13歳。
当時14歳だったAは、「暴行・脅迫」を受けたこと、「抗拒不能」な状態にあり、同意していなかったことを自分で訴えないと、
加害者を罪に問うことができない。

性交同意年齢…性行為何かを理解し、自分が性行為をしたいか、したくないかを判断できる年齢。現行法では、13歳未満は同意能力がないとして、彼らに対する性暴力は、いかなる場合にも加害者を処罰できる。

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HRNは、子どもを性暴力から守るため性交同意年齢を16歳に引き上げることを求めます。

【HRNが提案する改正案】
177条 不同意性交等罪・若年者性交等罪

1項 16歳以上の者に対し、その者の認識可能な意思に反して、性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」)を行った者は、不同意性交の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
2項 有形力の行使、脅迫、威迫、不意打ち、偽計、欺罔、監禁を用いて前項の行為を行った者は、前項の例による。
3項 前2項の性交等を16歳未満の者に対して行った者は、若年者性交の罪とし、6年以上の有期懲役に処する。但し、18歳未満同士で年齢差が2年以内の場合 は除く。

<事例3>
見習い中の被害者Aが、雇用主の加害者Bから性的暴行を受けた事例。
Aは、Bに誘われて業界関係者の懇親会に同行した。Aは飲酒をしなかったため、閉会後、かなりお酒を飲んだBを乗せて車で事務所に戻った。事務所に着いて、疲れたAが帰宅しようとすると、Bは「運転すると危ない、事故を起こしたら会社の責任になるから仮眠して帰れ」と強く言い、Aは仮眠をとることにした。

気が付くと、BはAの肩を揉んでいた。
Bは突然「好きだ。もう我慢できない」と言い、Aにキスをしたり、あちこちを舐めたりした。Aは恐怖心と過去に受けた被害のフラッシュバックから、意識が朦朧として抵抗する力が入らなくなってしまった。
そのまま力ずくで姦淫され、Aはショックから記憶が飛んでしまった。挿入されたかどうか、はっきりと覚えていなかった。

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Bは不起訴となり、検察審査会でも不起訴相当となった。
不起訴理由は公表されていない。

本事例の不起訴理由は公表されていないが、明らかな暴行・脅迫がなかったことが理由であると考えられる。※抗拒不能の可能性は検討されなかったが、性暴力被害者がショックでフリーズしてしまうことは珍しくない。

現行法では、「心神喪失・抗拒不能」
=「物理的又は心理的に抵抗することが著しく困難な状態」
それが具体的にどのような状態をさすのか、明記がない。
そのため、様々な精神的・身体的理由から抵抗できない状態で
被害に遭った場合に対応できず、
被害者を守ることができない。

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HRNは、特別に弱い状態に置かれた被害者への性暴力が処罰されるために、「心神喪失・抗拒不能」要件の具体化、明確化、緩和することを求めます。

【HRNが提案する改正案】
178条 同意不能等性的行為罪・同意不能等性交等罪

1項  176条1項の性的行為を、人の無意識、睡眠、催眠、酩酊、薬物の影響、疾患、障害、もしくは洗脳、恐怖、困惑その他の状況により特別に脆弱な状況に置かれている状況を利用し、又はその状況に乗じて行った者は、同意不能等性的行 為罪とし、176条1項の例による。
2項  前条1項の性交等を、人の無意識、睡眠、催眠、酩酊、薬物の影響、疾患、障害、もしくは洗脳、恐怖、困惑その他の状況により特別に脆弱な状況に置かれている状況を利用し、又はその状況に乗じて行った者は、同意不能等性交等罪とし、前条1項の例による。

雪田弁護士による地位関係性を利用した性暴力についての説明と、寺町弁護士による法務省での検討会についての報告は【後編】に続きます。

ぜひ、ご覧ください。

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