202号室
真ん中に寝転がる。天井には丸い日焼けが存在している。冷たさが背中から頭に届く。こんなに冷たかったのか。カーペットが一面にあったから気づかなかった。四肢を投げ出す。何にもぶつかることなく大の字になる。こんなに広かったのか。ベットや棚があったから気づかなかった。フローリングは一部が窪んでいる。この部屋の床は柔らかかった様だ。
私は今日、この部屋を出ていく。
「あーーーー!!」
少し響んだ(どよんだ)部屋。部屋に沈む私。こんなに響くのか。ものが多くて気づかなかった。自分の声はこんな感じで響いていたのか。話す内容に夢中で気づかなかった。
遠くからの子どもの声。窓が開いていたようだ。月は変わろうとしているが、まだ冬が居残った様な陽気だ。これも何も変わらない。外はただの日常だ。
不意に風が吹く。何かが流され、ベランダに落ちる。若葉だった。
それが私を響みから救ってくれた。掬ってくれた。すぐ起き上がり、部屋を出た。
鍵をかけたかは確認しなかった。
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