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「知らんけど」の精神で(後編)

不登校/ひきこもり状態の専門家はいない

 ところで、私は “経験者相談員” として20年余り積み重ねてきた実践経験をもとに、相談や家族会、あるいはアドバイザリーをつとめている藤沢市社会福祉協議会でのソーシャルワーカー相談などで、個別に本人の心理状態をお話ししたり対応方法を提案したりしています。しかし、それがほとんど的中しているかと問われれば、せいぜい「当たらずとも遠からず」といった程度でしょうと答えざるをえません。
 
 これは私が専門家(医師や臨床心理士や社会福祉士など)でないからではなく、専門家でも同じはずです。その自覚がなく「自分の理解と対応の仕方に間違いはない」と確信している専門家がいるとしたら、その方に相談することこそ避けるべきです。
 つまり、これまで何度も書いているように、不登校/ひきこもり状態は個別性がとても強い現象ですから「専門家はいない」と認識しておくのがちょうどよいと言えるのです。
 
 そこで、ご家族も関係者も「この子はこう思ってるんだろうな」とか「この人にはこう接すればいいだろうな」と考えたとき、最後に「知らんけど」と心の中で付け足すことや、本人に何か言ったとき最後に「知らんけど」と言うことをお試しになってはいかがでしょうか。
 
 私の不登校時代、父は「親を困らせるためにわざと学校を休んでいる」と断言していました。そのあとに続けて「知らんけど」と言える余裕が父にあったら、父との関係はもっと良かっただろうなと思います。

ますます多様化する不登校/ひきこもり状態

  話は少し違いますが、先日(転載者注:2年前の同時期)文科省が「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の結果を公表し「小中学校の不登校は約24万人」と、前年度の約18万人から激増したことが判明しました*。また、以前お伝えしたように内閣府の調査結果で15~64歳のひきこもり状態にある方が計115万人という推計値が公表されています**。
 
 不登校/ひきこもり状態にかぎらず何のことでもそうですが、人数が増えれば増えるほど=すそ野が広がれば広がるほど、原因やタイプやプロセスが多様化するのは自明の理です。
 
 当然ながら不登校/ひきこもり状態にある人は、近年ますます多様化が進んでいるため、原因論や対応・支援論もますます多様化せざるをえなくなっています。
 私の実感でも、相談内容は多様化の一途をたどっており、ますます個別的な判断が求められるようになってきたと感じています。
 
 そこで、21年目の最初にひとつ宣言しておきます。
 
 これまで私は、自説を唱える立場上「本人の多くは」と表現してきましたが、これからは「少なからぬ本人は」と表現してまいります。
 
 今後も多様化する不登校/ひきこもり状態について研鑽しながら執筆してまいります。来年もご愛読のほどよろしくお願い申し上げます。

*先日公表された最新の同調査では、昨年度は約34万5千人となっています。
**去年3月に公表された最新の調査結果では、約146万人と推計されています。

初出:
本文=メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』第268号(2022年12月16日)

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※この文章を執筆してからの2年間で、小中学校の不登校は10万人以上、15歳以上のひきこもりは30万人以上、それぞれ増えたことになります。特に、強い発達特性や精神症状へは一般的な不登校・ひきこもり対応が適用できないことを、私はこの当時気づいていました。以来私は、毎年度通年開講しているオンライン連続講座「ヒュースタゼミナール」(ヒューゼミ)の最終回(3月)で必ず、講師をつとめる外部の研修会で可能なかぎり、それぞれ対応の多様化を提言しています。

※そのヒューゼミ、今年度の後半が先月スタート(第5回を実施)しましたが、今年度初めて設けた「後半のみの通し受講枠」(家族支援セット)が定員に達していないため、申込受付期間を24日(火)まで延長しています。
後半の趣旨やこれから通し受講する方法などは、 ↓ の公式ブログ記事に説明していますので、ご関心の方はご一読のうえ、末尾にリンクした告知ページで詳細をご確認ください。

※あさって15日(日)、12月恒例の家族懇談会「ダベるの会」をオンライン併用開催いたします。不登校とおとなひきこもり両方のご家族様が合同で語り合う茶話会です。当日参加も可能ですので、ご関心のご家族様は ↓ の公式ブログ記事をご一読のうえ、末尾にリンクした告知ページで詳細をご確認ください。

※その次の週末、大阪府で開催される「全国若者・ひきこもり協同実践交流会in関西」の1日目に分科会のコーディネーターをつとめます。若者と協力しての社会づくりや不登校・おとなひきこもり支援にご関心の方は、 ↓ の公式ブログ記事をご一読のうえ、末尾にリンクした告知ページで詳細をご確認ください。

※その次の週末、28日(土)には、横浜市北部の地域福祉施設で年末イベントが開催され、私も「開閉会宣言」や「ファッションショー」などに出演いたします。ほかにも神奈川県内で著名なおとなひきこもりの当事者活動家などが出演し多彩なプログラムを実施するお祭り型イベント。ご関心の方は ↓ の公式ブログ記事をご一読いただき、末尾にリンクした告知ページで詳細をご確認ください。

※先月もお知らせした、横浜市のおとなひきこもり家族会「KHJ横浜ばらの会」の学習会で行う講演、前編を8日に行い、後編は来年1月12日(日)に行います。ご家族に限らずどのお立場の方でもご参加いただけます(要事前申込)。ご関心の方は ↓ の告知ページを少しスクロールした箇所をご覧ください。

※以上、いずれもよろしければご参加またはご紹介をお願いいたします。

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丸山康彦
不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。