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「知らんけど」の精神で(前編)

※2020年度と2021度の2年間、メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本の掲載文(コラム)を転載してきましたが、2022年度からは『ごかいの部屋』掲載文にかぎらず過去に書いた文章を毎月1~2本、時系列に転載することによって私の自称 “体験的不登校・ひきこもり論” の進展をたどりながら理解と対応の参考にしていただけるよう進めています(執筆時から年数が経っていることで修正する場合があります)。

※2022年度からは「原則として2年前までの文章を転載する」という方針で更新しており『ごかいの部屋』掲載文にかぎらず30年余り前の文章から選んで時系列に転載を進めてきました。そして現在はおもに2年前の文章を掲載しています。そこで今月は、おととし12月に配信した『ごかいの部屋』の掲載文を転載します。

※小中学校の不登校児童生徒が約34万5千人という文科省の調査結果が公表されたのは記憶に新しいところ。この文章を書いたのが2年前の同じ時期なので後半の最後で調査結果にふれていますが、全体として不登校/ひきこもり状態がいかに多様で一律に論じられないかをますます実感していた当時の思いを吐露した内容になっています。

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 当メルマガの本欄(転載者注:「コラム」欄)も前回9月(転載者注:2022年9月)で丸20年となりました。本欄に掲載している文章は、今回で213本目になります。
 そこで今回は、21年目の最初ということと年末であることを踏まえた内容を、ふたつに分けて書きたいと思います。

不登校/ひきこもり状態の苦しみを防ぐには

 まず、不登校/ひきこもり状態の「予防」についてです。
 
 私は近年、研修講師のご依頼をいただくことが増えました。そのうち遠方の自治体からいただくのは、当時の時節柄ほとんどがZOOM研修会のご依頼です。
 最近、そのひとつだった半公開(ご家族の参加可)の研修会で、参加した親御さ んから「不登校の予防策は?」と質問され「過干渉より過保護のほうがまし」とか「学校にも問題が」とかいろんなことをまとまりなく言ってしまいました。
 それらは、私が重要視していることではありませんでした。
 
 私は、そもそも不登校/ひきこもり状態になることを必ず予防すべきとは考えていませんが、あえて予防策を言えとなったら「 “通学/就職するのが当たり前” という常識をなくすこと」に尽きると答えます。
 この常識が、不登校/ひきこもり状態になったら最後、2度と立ち上がれなくなるほどのダメージを本人と家族に与えるからです。
 
 反対に「学校を休んでもいい」「無職であってもダメ人間じゃない」という価値観が広まれば、学校/社会への出入りが自由になります。すると「学校を休んでいる」「仕事をしていない」というのが「それだけのこと」になって本人や家族へのダメージが小さくなるため「多くの場合 “地獄の苦しみであるうえ脱するのが難しい” ことに特徴づけられる不登校/ひきこもり状態」は激減すると推測できるわけです。

「知らんけど」って何?

 次に、その年の年末の話題から。
 
 先日「ユーキャン新語・流行語大賞」が発表されましたが、2年前の大賞は「村神様」だったことをご記憶の方がいらっしゃると思います。その際、ベストテンに「知らんけど」というただの関西弁が入ったのを不思議に思った方がいらっしゃるかもしれません。
 
 X(旧Twitter)をやっておられる方はご存じだと思いますが、これは「知らんけど」という関西弁の便利さが話題になり、バズった(広く拡散されたくさんの人の目にふれた)結果です。
 当時、本欄の執筆中に朝日新聞のオピニオン欄でこの言葉が取り上げられ、3名の有識者が解説していたほどです。
 
 この言葉は「~だよ。知らんけど」とか「~したほうがいいんじゃないの? 知らんけど」などと、確証が持てないことを言ったとき最後に付けることによって、発言のインパクトを弱めたり判断を相手に委ねたりするのが、一般的な使い方のようです。

                           <後編に続く>

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丸山康彦
不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。