その王の名はチャンドラポメロ。受験生なら覚えておいた方がいい。
大型連休になると、つい「道の駅」に立ち寄ってしまう。地域色豊かな物産の中でも、生産者直売の野菜や果物は見てるだけで楽しい。冬場はみかんが多いが、あまり聞いたことのない果物も、結構置いてある。中でもやはり柑橘類が多いようだ。
柑橘類はフルーツの王だと思うのは私だけだろうか。
例えばぶどうには「巨峰」「ピオーネ」「シャインマスカット」など、誰もが知る様々な品種がある。それでも我々はそれらを総じて「ぶどう」と認識する。それはりんごでも、梨でも、柿でも、バナナでも全て同じだ。我々はまず果物の「一般名詞」を先に想起して、品種・つまり「固有名詞」はサブカテゴリーだと認識する。
ところが柑橘類だけは勝手が違う。「ぶどう」「りんご」に相当する一般名詞が多すぎるのだ。
みかん、オレンジ、グレープフルーツ、ネーブル、八朔
、夏みかん
これらは全て他の果物で言う「ぶどう」に相当する。
オレンジやグレープフルーツを「みかん」の品種違いだと思う人はいないのだ。
一般名詞の柑橘類はまだまだある
伊予柑、金柑、ポンカン、ダイダイ、タンカン、シークァーサー、ライム、柚子、レモン、かぼす、すだち、文旦、デコポン…等々。
どんな理由があるのかわからないが、とにかく多すぎる。その繁栄ぶりは他の追随を許さない。間違いなくフルーツ界の王、最大種族と言っていいだろう。
その柑橘族を統べる最強の王がいる。
つまり、王の中の王。皇帝と言ってもいい。
その王の名は「チャンドラポメロ」
戦闘民族「晩白柚」との十数年に渡る戦争を制し、初の柑橘族統一を果たした、チャンドラポメロ一世その人である。
チャンドラポメロ一世は、戦争の天才であるに留まらず、卓越した政治センスとその先見性でチャンドラポメロ朝1000年の礎を築いた…。
そんな妄想から衝動買いしたチャンドラポメロの味は、思ったより普通だった。甘めのピンクグレープフルーツと言ったところか。子供達は、普通にうまいうまいと平らげ、その後何事もなかったのようにTVを見ている。
彼らが柑橘族の王に思いを馳せる事はない。
大きめのグレープフルーツを食べたと思うだけだ。
とは言え、記憶の片隅には残るだろう。
近い将来、彼らが大学入試に挑むとする。
意地悪な作問者が、世界史の問題にチャンドラポメロを四択の中に入れるかも知れない。
その時にこそ、今日の思い出が活きる。
彼らは
「あれ?これフルーツの名前じゃね?」
と誤答を避ける事ができるだろう。
チャンドラポメロ一世も浮かばれるというものだ。