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シゴデキという今時ワードを、当のシゴデキさんが使わない理由

ネットで、たまたま「シゴデキ」という言葉が目に入った。「仕事ができる人」を指すらしいが、不覚にも知らなかった。というより、自分の周りでは聞いた事がない。

Googleで調べると、2023年以降の結果が多いので比較的最近の言い回しと推測される。

で、普段ほとんど目にしないXで検索すると、大量にヒットする。SNS及び若者界隈では当たり前の言葉なのだろうか?
ポストの内容から、女性に対して使う言葉と思いきやそうでもない。シゴデキ女子ともシゴデキ男子も、両方使われている。

こういったネットスラング(?)は、一般に普及するとともに、そのままビジネスシーンでも使われる事が多い。結構な役職にある人でも「無理ゲー」とか「だれ得」とか「舐めプ」とか、普通に言ってたりする。

シゴデキもそのうち、誰もが普通に言うようになるだろう。

と、思いたいとこだが何か違和感がある。

「舐めプ」を初めて聞いた時のような、しっくり感がないのだ。
ネットやSNSでここまで使われているのに「シゴデキ」さんの現場であるオフィスで、これまで聞いた事がなかったのも不思議だ。

その理由はわからないが、違和感の正体ははっきりしている。

仕事のできる人=シゴデキさん本人は、まずこの言葉を使わないと思われるからだ。
その理由は以下の通り。



①シゴデキという略語自体が、論理的でない

シゴデキは言うまでもなく「シゴトがデキる」の略語である。
ただしこの法則に従うと「シゴトがデキない」という逆の意味も「シゴテキ」になってしまう。

当然ながら仕事のできる人は論理的な人が多い。論理的に美しくない略語を好んで使う事はないだろう。

②シゴデキさんより仕事ができる人が少ない

「仕事ができる」とは、組織の中で相対的に上位少数である状態を指す。

シゴデキさんの該当者が組織の上位5%以内の人間を指すとしたら、シゴデキさんにとっての「シゴデキさん」はとても少なくなるだろう。加えて仕事のできる人は、得てしてプライドもそれなりに高い。

自分より仕事のできる人を簡単に認めようとはしないだろう。


③そもそも「仕事ができる」という言葉自体を使わない

「仕事ができる/できない」はそもそも一概に言えるものではない。
定型業務はめっぽう強いが、営業成績がサッパリの人。
プレゼン力が底辺なのに、なぜか仕事をもらえてしまう人。
一つ一つのスキルは大した事ないのに、トータルで結果を出す人。

などなど、人の能力と貢献度には様々なパターンの組み合わせがあるのだ。仕事のできる人は、当然ながらそれをわかっている。

わかっているから「仕事ができる/できない」を安易に口にする事はない。

「あの人は定型業務に強い」
「あの人はプレゼンが上手い」
「あの人は数字で結果をだす」

など、具体的に領域を絞った発言しかしないはずだ。

「仕事ができる」をそもそも使わないのだから、その略語であるシゴデキを使う理由もない。


上記の考えが正しいとしたら「シゴデキ」という言葉を使うのは、仕事ができない人に限定される、という理屈になる。そして「シゴデキ」の言葉を使おうものなら、同じく上記の理由で

『この人は論理的でない』

『この人は相対的に仕事ができない』
『この人は能力や貢献度を区別できない』

と告白しているという事になってしまう。

あ、それだ。

今まで職場で、なぜ「シゴデキ」を聞かなかったか謎が解けた。
仕事ができない人が、シゴデキという言葉を知っているとする。
でもそれを口にすれば、上記理由から正式にシゴデキでない人認定されてしまう。

その事をわかっている仕事ができない人は、シゴデキという言葉を使うのを、SNSやシゴデキさんが参加しない飲み会の席などに限定する。
結果、職場では誰も「シゴデキ」と耳にする事はないと言う訳だ。

これで解決。 

いや待て。

そもそも仕事のできない人がそこまで高度な予測ができるだろうか?
できる位ならその人はすでに「シゴデキ」と言えるのでは……

なんだか良く分からなくなってきた。
やはり、シゴデキは今後定着するのだろうか?

だとしたら、私はシゴデキでは無い事になる。


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