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名前がわからない女性は「お姉さん」と呼べばいい。【にほんご迷子9】

バーなどの飲み屋で、見知らぬ女性と会話が弾む。相手は、私より一回り年上に見える。50代後半くらいか。で、だいたい区切りでこう聞かれる。

「ところで、お兄さんはこの店に良く来るの?」

私の返事はこんな感じ

「月2回くらいですね〜。・・・『お姉さん』はどうですか?」

頭の中の『おばさん』を『お姉さん』に変換する。


麻生さんの発言でも話題になったが、「おばさん」は今やトップクラスで取り扱い注意の日本語だ。女性が自分たちに使うのは問題ないのに、男性から言われると蔑称になる。血縁の「おばさん」ですら言うのが憚られる感さえある。
冷静に考えるとおかしいのだが、定着した社会通念は変えられない。

どう見ても「おばさん」だが、私にとっては年上なので「お姉さん」だと自分を納得させる。

いや、何かおかしい。
仮に、私と話しているのが20代の女性だったとする。

やはり私が使うのは「お姉さん」だ。
年下なのにこっちの方がしっくりくる。

ちょっと整理してみよう。


名前を知らない女性に対する二人称

0〜1歳→「赤ちゃん」

2〜10歳→「お嬢ちゃん」

11〜15歳→「お姉ちゃん」

16〜35歳→「お姉さん」

なるほど。「お姉さん」は歳上を指すものではなく、「若い女性」全般を表す。呼ばれた方も納得感がある。
「私に弟も妹もおらんわい!」とキレる人は稀だろう。

で、ここからが問題だ。

36〜55歳→「お姉さん」「おばさん」「お母さん」

56〜75歳→「おばさん」「お母さん」

76歳〜→「おばあちゃん」「おばあさん」

なんとも悩ましい。まず、世間的に「おばさん」は封じられている。

となると「おばあさん」などもっての外だ。
下手したら100歳の人にも使えない。

「お母さん」もアリだが、こちらは「お姉さん」とは逆に子供のいない方には不快に思われる可能性がある。

としたら、残るは「お姉さん」しかない。
私の判断は間違えてなかった事になる。


普通に「あなた」でいいのでは?とも考える。

「ところで、お兄さんはこの店に良く来るの?」

「月2回くらいですね〜。・・・『あなた』はどうですか?」

いや、変だ。どこぞの紳士感がでてなにやら気恥ずかしい。日常生活で「あなた」はそこまで普通じゃない。

だいたい相手は「お兄さん」と言ってるのにバランスがおかしい。

あれ?「お兄さん」??

まさか相手も「おじさん」呼びを変換してる?
男性パターンも考える必要がありそうだ。

いずれにせよ、16歳以上の見知らぬ女性に使える二人称は「お姉さん」しかない事は、ほぼ確定だ。

同調圧力に屈するのは悔しいが仕方がない。

名前を知らない女性は全て「お姉さん」
世の女性は、全員身内だ。


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