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高級と低級。これほどにまで格差のある対義語を私は知らない 【にほんご迷子13】

今更だが、自分は高級食パンというものを食べた事がない。

「一度食べて見て下さい!本当に美味しいですから」

なにかの流れでその事を話すと、熱心に勧めてくる人がいる。かつてのブームは完全に終わり、店舗数も減少傾向と聞くが、熱心なファンはいるようだ。

とは言え、食パンは食パンだろう。「普通の食パン」の価格は高級食パンの4分の1そこそこ。控えめに言って4倍も美味しいとは考えにくい。

などと考えて、ふと思い至る。 

普通の食パン?
高級食パンの反対は『普通の食パン』でいいのだろうか?



「高い」の対義語は「低い」
我々は様々なバリエーションの「高低」を対義語として、日常会話で使っている。

高額←→低額
高音←→低音
最高←→最低
高学歴←→低学歴
高収入←→低収入
高気圧←→低気圧

「対義語」という文字通り、これらの組み合わせは「対」を成している。故に言葉の使用頻度もほぼ同等だろう。

で、問題の「高級」食パン。

「高級」の対義語は考えるまでもなく「低級」だ。

しかし、その扱いはその他の「高低ファミリー」とは明らかに事情が異なる。

「低級」という言葉は、大抵何かに置き換られる。

高級車←→大衆車
高級ホテル←→格安ホテル
高級スーパー←→激安スーパー
高級モデル←→入門モデル
高級住宅←→一般住宅

見事にすべて「低級」を避けている。

「低級なんて言ったら買ったお客様に失礼だ」
と言われればそれまでだが、なぜ「低級」が失礼なのかのを説明できる人はいないだろう。

「低級」は「高級」比べて明らかに冷遇されている。
これほどにまで格差のある対義語を私は知らない。 


幸いにも「高級」ではない「普通の食パン」は、現時点では単なる「食パン」と言われる。
「格安食パン」とか「大衆食パン」などと呼ぶ人は、今のところまずいないだろう。

今こそ「低級」をメジャーにするチャンスかも知れない。

「低級食パン」を売り出すのだ。

バターを使わない。
砂糖もつかわない。
なんなら生地のままで焼いてすらない。
発酵など贅沢の極み

「低級食パン」がヒットすれば、「低級」が失礼などとは誰も思わなくなる。

いや、本当にいけるかも知れない。値上げラッシュで我々庶民の暮らしはますます厳しい。

「小麦本来の味を生地で楽しむ?
話題の『低級食パン』を緊急レポート!」

情報番組で、紹介されても違和感がない。

パンメーカーの皆さん、ご検討下さい。


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