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私のパパのスマホとは、いったい誰のスマホなのか 【にほんご迷子23】


「ねえ、私のパパのスマホ知らない?」

ソファで寝そべる私に娘が話しかける。

「え?何のスマホって?」

「いや、前パパが私にくれるって言ってた私のスマホの事」

ああ、そういう事か。
機種変更で使わなくなった私のiphone10を、娘が何となくの流れで使っているのだ。私のデータがそれなりに残ってるので、正式にあげたつもりはないのだが。

それにしても「私のパパのスマホ」とはいかにもJKらしい、残念な言い回しだ。

この言い方だと
「私(娘)」のスマホなのか、
「私(娘)のパパ」のスマホなのか、区別がつかないではないか。

当然文脈的に前者である事は分かる。実の父に対して「私のパパ」などと言う筈はない。とはいえ社会に出た後、稚拙な言い回しで恥をかくのは当の本人だ。ここは親として、修正しておくべきだろう。

このケースは所有を表す「の」が2回使われている事が混乱の要因なので、まずはそこから改善だ。

「私のパパが以前使ってたスマホ」
あれ?駄目だな。
こうしても所有者が「私(娘)」なのか「私のパパ」なのか区別できない。

「パパが以前使ってた私のスマホ」
いけるかと思ったが、これも駄目だな…
これだと「私(娘)のスマホ」をパパが以前借りてたようにも聞こえてしまう。

「の」の問題ではないのだろうか?
スマホが元々パパの所有物である事を確定させる情報を入れてみよう。

「私のパパの元スマホ」
うーん、やはり駄目か…「元」を入れても、結局どちらの所有物にもとれてしまう。「元」の位置が悪いのだろうか。

「私の元パパのスマホ」
これは更に駄目だ。これではパパが「私の元パパ」とも聞こえてしまう。まだ私は離婚していない。

どうも具合が悪い。これでは娘の言う
「前パパが私にくれるって言ってた私のスマホ」
が1番正確という事になる。

これはいくら何でも不恰好で長すぎる。
言語強者を自認する身として、端的な表現を諦めたくはない。これをもっと短くするにはどうするか…

まてよ?

そもそも所有者っぽい人物が2人いるのが問題ではないか?このスマホは娘が使っているが正式に娘のものではない。つまりこの状況が特殊なのであり、私の言語能力が低いわけではないのだ。つまり、現在このスマホが誰のものかハッキリさせればいい。

最適な言い回しはコレだ。

「それを言うなら『パパが私にくれたスマホ』だろ?」

我ながら端的かつ正確。
誤認もしょうがない、最適な言い回しだ。


「あっ、じゃあ本当にくれるんだね。ありがとう〜!」

まあ、そうなるわな。
稚拙な言い回しを正せるなら、スマホの所有権など惜しくはない。

ソファの隙間から、さっきまで私の物だったスマホが見つかった。

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