丁寧に磨いているのに虫歯になった女性Aさん
歯の根元が虫歯になっているAさんは、久し振りの歯科受診にもかかわらず、歯石がまったく付いていない。
時間を掛けて磨いているのが一目瞭然だ。
キレイに磨いている人を見ると「ああ、この人は自分の歯を大切にしようと努力しているんだな」と放っておけず「このタイミングで私が説明しなければ!」と応援したくなります。
「口の中を見て感じるところがあるので、もしかしたらと思ってお話しさせていただくのですが、歯みがき粉を付ける量が少なくないですか?」
「え?まあ、ちょっと少ないかもしれません。あまり付けたくないから」
「付かないのはどうしてですか?」
「昔、歯医者で歯が削れるから、あまり付けないように言われて」
「なるほど。昔は歯みがき粉の中に入っている研磨剤で歯が削れるとか、泡立って磨いた気がしてしまうという理由で少なくていいと言われていたのですが、今日治療した歯は歯みがき粉をたっぷり付けて磨けば治療しなくて良かった可能性があるんです。だって、すっごくキレイに磨いてらっしゃるじゃないですか」
「なんでわかったの?私、家族からそんなに長く磨かなくてもいいんじゃないかって言われるくらい時間を掛けていつも磨いているんだけど…」
「見ればすぐにわかりますよ!私も30年前は同じように説明していました。ですが今はたっぷり付けるのを推奨しています。Aさんなら2cmです」
「2cm!そんなに⁉」
「今と同じ習慣だと、他の歯も同じように虫歯になる可能性が高いです」
「すごく時間掛けているのに、なんで虫歯になっちゃうんだろうって思ってたのよ」
「そうですよね。それで声を掛けさせていただきました。今の状態は歯ぐきが下がって、元々は見えていなかった根本が見えてますよね?歯って身体の中でいちばん硬い組織なので、本来は一生懸命磨かなくても虫歯になることはないのですが、歯ぐきの下に隠れていたところは、やわらかい組織なんです。歯の表面と歯ぐきの下の歯の硬さは違うんです。」
(エナメル質モース硬度7.象牙質6.セメント質5)
大人は歯の根元が虫歯になることが多いんですが、虫歯の予防に効果があるのは『フッ素』なんです。WHOでも虫歯の予防に効果があるのは磨くことよりもフッ素だと言ってます。歯みがき粉の中のフッ素で防ぐことが出来るんですよ。WHOって世界保健機構ですから、どこかの会社が当社調べ100人で出した結果じゃないわけです。膨大な人数、期間…いろいろ研究した結果で出した答えですから、根拠に基づいたことをやった方が効率いいじゃないですか」
「確かにそうね。市販の歯みがき粉でもフッ素って入ってるのかしら?」
「30年前は市販のフッ素配合のものが10%程度しかなかったのですが、今は90%以上に入っていますよ。歯みがき粉の中に入っている研磨剤も研磨剤の規格が国際規格で決まっていて…専門用語になっちゃうんですがRDA250以下にしなさいってなっているんですね。RDAっていうのは歯の根元のやわらかい部分が削れる数値です。日本で販売されている歯みがき粉は研磨剤が、平均RDA80ですから付けすぎて削れるってことはないんです。
Aさんが、歯みがき粉をたっぷり付けると他にも良いことがあるんですよ。昔に比べて歯が長くなったように感じませんか?」
「そうなの。だんだん歯ぐきが下がってきちゃって、抜けちゃったらどうしようって心配で」
「体を洗う時を想像して欲しいんですけど、なにも付けずに体を洗うのと石鹸を泡立てて洗うのでは、肌への刺激が違いますよね?体でも皮膚の厚みが違うように、かかとだったら問題ななくても、まぶたをタワシでこすったら大変なことになりますよね?Aさんの歯ぐきは、まぶたのようにやわらかくて薄いですから、ハブラシの刺激から守る必要があります」
「私、付ける方がダメだと思っていたわ。付けると良くないって聞いたからずっと付けるの少なくしてた」
「食器を洗うのも、トイレ掃除も洗剤を少ししか付けないで洗うより、たっぷり付けた方がきれいになるじゃないですか?」
「ああ…」
「どんなに高価で良い成分が入っていても、付ける量が少なかったら効くものも効かないですし、薬だったら、服用する量が半分だったら治る病気も治らないですよね。それに、口の中は細菌だらけですから、ちょっとしか付けないで磨いていたら、汚れたところを汚れたものでキレイにしていることになります」
「今日からたっぷり付けるわ」
「磨き方はお上手ですから付ける量を増やせば心配ありませんよ!ご安心ください」
「じゃあ、定期的に歯石を取りにくれば大丈夫?」
「はい。磨き残したところはこちらでキレイにしますからお任せください」
虫歯予防って“3びきのこぶた”みたいだ。
歯科衛生士の私から見たら、オオカミに食べられないようにワラの家に逃げているように見える。
そして、ワラの素材にこだわるとか(どのメーカーの歯みがき粉がいいか)、ワラの家の作り方のテクニック(ハブラシの動かし方のテクニック)を高めるのもいいけれど、ワラからレンガの家へと逃げて〰と見守る読者の気持ちなんです。
ワラをレンガにするには『フッ素で歯を硬く』する。
1.歯みがき粉をたっぷり付ける。
2.歯科医院でフッ素塗布してもらう。
今日からレンガの家に住みませんか?
おくちの窓口まいちゃんでした😃