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『私の命はあなたの命より軽い』

あまりにもつまらない日常を送りすぎていて書くことがないので手始めに近くにあった最近読んだ本の感想を書くことにします。

『私の命はあなたの命より軽い』近藤史恵

まず何と言ってもタイトルが良い。タイトルに惹かれて衝動買いしてしまった。

このタイトルからあふれ出るダーク感。一文だけで伝わってくる恨みの迫力。イヤミス好きとしてはたまらない。

内容もタイトルに負けじと素晴らしいものだった。

とても大雑把に導入部分を説明すると、主人公は夫との間に子供を身籠るが出産を間近に控えたタイミングで夫の長期出張が決まってしまう。そこで里帰り出産をしようとするもどうにも家族の様子がおかしい・・・というものである。

この作品の良さはなんといっても「得体の知れない居心地の悪さ」だ。

自分一人だけ事情が把握できていないあの不安感。周りでは空気読みが始まっているのに自分だけは何が起きているか分からないから手探りで地雷を踏まないように気を張り続けるあの気まずい状態を疑似体験させてくれる。

誰しも一度は体験したことがあるのではないだろうか。学生のとき教室内で一軍女子同士が冷戦を繰り広げているかのような、あの重たい空気。

さらにこの作品のいいところは主人公に共感しやすいところだ。

伝わりやすくするため物語の冒頭部分を抜粋させていただくことにする。

「物事がうまくいかないのは今にはじまったことじゃない。」
「頭の中で思い描いていた予定はいつも、勝手な誰かの思惑でずたずたに踏みにじられる。」

いい!!!!!!!!良すぎる!!!!!!!!!!!

思わずヘドバンしそうなほど共感できる入りに脱帽。
私含め誰しもが抱いたことのあるだろう生きづらさの正体を文章にしてみましたと言わんばかりの出だし。

あらすじで説明した通り、夫は長期出張に行ってしまうわけだが、そこに文句は言うものの結局自分の力では何も覆すことのできない無力感。

感情移入しすぎてもう辛くなってくる。

初出産で不安なのにそばにいてくれない夫への苛立ち、悲しみ、かといって長期出張を決めたのは夫の会社で逆らうわけにもいかないし・・・みたいな。

苦しいよ~~~~~夫が100悪いなら怒鳴り散らして反省させられるのに・・・

さらにこの主人公のいいところは、おそらく読者が一番望んでいるであろう選択肢を選び続けてくれるところだ。

主人公の行動選択は読者にとってストレスになりかねない。

私はたまに主人公の選択にイライラして読むのをやめてしまうことがある。
ラブコメでは特にそうだ。

しかし本作では主人公が私の思い通りの動きをしてくれる。本当にストレスフリーだった。

正直ここは個人差あるのでなんとも言えないが没個性的な私がそう思うなら多くの人にとってもそうなんじゃないかと思う。

終盤の展開も点と点が線でつながるような爽快感があって良かった。

今溜め込んでいる本の山を一周したら絶対にもう一度読み返したい。
大変読みやすいので3、4時間ほどで読み切ってしまった。

本を読み始めたいけど難しいのは嫌だ、湊かなえのようなドロドロ感を味わいたい、そんなあなたにおすすめです。


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