~2022年度最新の調査結果から読み解く~ エンゲージメント向上のカギとなる従業員エクスペリエンス(EX)
昨今、人材獲得競争の激化や人材の多様化により、従業員エクスペリエンスの向上が国内外で注目されています。そこで今回、PwCコンサルティング合同会社の土橋隼人氏と入江和宏氏に、『エンゲージメント向上のカギとなる従業員エクスペリエンス』をテーマとしてお話を伺ったイベントから、一部抜粋してお届けします。
本イベントレポートの全文は、下記URLからダウンロード可能です。
~2022年度最新の調査結果から読み解く~ エンゲージメント向上のカギとなる従業員エクスペリエンス(EX)
登壇者紹介
エンプロイーエクスペリエンスを取り巻く概況
■ エンプロイーエクスペリエンスとは?
エンプロイーエクスペリエンス(従業員エクスペリエンス・従業員体験:以下EX)とは、従業員が入社してから退社するまで組織の中で得る経験のすべてのことです。この経験には業務だけではなく、人間関係などの成長機会を通じたすべての経験を含みます。また、EXは入社前の採用段階で始まり(Candidate Experience)、退社後も続いていく(Alumni Experience)ものと対象範囲が広がっています。
■ EX向上が求められている背景
なぜ、企業はEXを高める必要があるのでしょうか。
一つ目の理由は「人材獲得競争の激化」です。終身雇用が当然ではなくなった現在、企業は「いかに優秀な人材を獲得・引き留めるか」という問題に対し、「自社の従業員に良質な体験を提供する」ことを一つの解決策としています。
二つ目の理由は「人材の多様化」です。この多様化には、年齢・性別・国籍などの目に見える多様性にくわえ、働き方に対する考え方など、目に見えにくい個人の価値観も含まれます。この、価値観の多様化には個々の従業員に合わせて体験を提供し、高めていくというアプローチが重要です。
三つ目の理由は、「テクノロジーの進化」です。多くの従業員は日常から様々なデジタル技術に触れ、企業内においても同様の体験を求める傾向にあります。また、様々なデジタルツールが市場に登場しており、企業側もこうした技術を用いた体験を従業員に提供していくことが可能となっています。
最後の理由は、「顧客視点での体験(カスタマーエクスペリエンス:以下CX)への注目度の上昇」です。顧客へのCXを向上させるためには、EXを高めることが有効です。これは、EXを高めることで従業員エンゲージメントが向上し、高いエンゲージメントを持った従業員が企業のために積極的に顧客の声を集めるようになるという考え方です。従業員は顧客との接点が多いため、彼らが収集した声はCX強化に活用できる重要な情報となるでしょう。
■EXの6領域
EXは非常に広い領域を指す言葉です。当社では、EXを6つの領域に整理しています。今回実施したEXサーベイの設問にもこのフレームワークを組み込み、この考え方を用いて企業におけるEXの成熟度を計測しています。
6つの領域は以下の通りです。
ネットワーキング領域
ワークスタイルオプション領域
ライフサポート領域
リクルーティング&オンボーディング領域
キャリア&スキルデベロップメント領域
リワードリコグニション領域
エンプロイーエクスペリエンスサーベイ調査結果から
本調査は2018年から実施しており、今回で4回目となります。EXの認知度・重要度・成熟度や、従業員エンゲージメント調査の実施状況について聞いており、今回は200社を超える企業様から回答をいただきました。
エンプロイーエクスペリエンスサーベイ調査の詳細につきましては、以下よりご確認ください。
エンプロイーエクスペリエンスサーベイ 2021-2022調査結果(速報版)
<調査結果 要約>
・EXという言葉の認知は広がっており、経営レベルのテーマとして認識されつつあるものの、EX向上に関する施策を行っている企業はまだ少ない。また、行っていても「部分的」な実施に留まっている。
・ワークスタイルオプション領域の成熟度は高まっているが、更なる価値発揮のために従業員同士のつながりの充実に着目した施策まで踏み込んでいる企業は少ない。
・従業員エンゲージメント調査を行う企業は多いが、改善策実施や効果実感まで繋げられている企業は少ない。
・EXを高めることは従業員エンゲージメントの向上に寄与する可能性が高い。特に、体系的にEXに取り組むことで、その効果は増大する。
トークセッション
Q.従業員エンゲージメント・従業員エクスペリエンスの関係性とは?
A.土橋氏
従業員エクスペリエンス(EX)は追いかけるもので、従業員エンゲージメントは結果としてついてくるもの、です。
日本企業の方からは「エンゲージメントサーベイをやるが、その結果を受けての施策が難しい」というご相談をよくいただきます。その中でも「データをどう解釈したらいいのか・施策に進めていくのかが難しい」と悩んでいる会社が多いように思います。今回の調査結果における、従業員エンゲージメント調査の実態についても同様の結果となっています。
EXを高めるためには、目に見えない価値観などを含めて可視化し、整理・分類してペルソナを作ることが必要です。企業によって異なりますが、職種・年代や新卒入社・中途入社などで区切ることが一般的で、おおよそ8個〜10個に分類されるパターンが多いのではないでしょうか。
Q.甘やかしすぎによる若手社員の離職が話題となることがあります。EX向上を重視することは従業員にサービスを提供しすぎ(=甘やかしすぎ)ではないでしょうか?
A.吉田
EXを考えていくうえで「期待値調整」は非常に重要な論点です。従業員目線は大事ではあるものの、最終的にはどのように企業成長に繋げるかが大切です。
そのため、企業が「従業員はEXをどのように認識しているのか」「従業員の期待値はどこにあるのか」を把握することが大切です。そのうえで、期待値と実感値のギャップが大きい領域から優先順位をつけて改善していくことが重要です。
A.土橋氏
補足するなら、EXの観点では人材と組織の関係は「対等」です。
従業員が会社に求めることがあるように、企業が従業員に求めることがあります。2つの間にギャップがある場合、企業が応えていくべきなのか、企業が従業員を説得して変えていくべきなのか検討したうえで対応策を講じるのが良いと思います。
もうひとつ大事な軸があります。それは「スタンダード(基準)」という観点です。質問者の方のように「EX向上というのは従業員を甘やかすことではないか」と聞かれることは多いです。心理的安全性の議論でも言われることですが、EX向上だけでなく「仕事の要求水準を高く保つ」ということがあってこそ、個人や組織の成長が実現します。スタンダードとEXの高さを両立させていくことは、忘れてはいけない観点です。
Q.最後になりますが、なぜ、従業員エクスペリエンスに注目しているのでしょうか?
A.土橋氏
PwCコンサルティング合同会社がEXサービスを立ち上げたのは2018年です。「従業員が多様化する中で一律的でマネジメント目線のみによる人事施策は限界がきているのではないか」という考えが、立ち上げの理由の一つです。
マネジメント目線での施策に合わせて「従業員の多様性を理解する」「EXを高めていく」という施策を同時に行わなければ、人材を獲得してくこと・動機づけていくことは難しくなるのでは、という考えから従業員エクスペリエンスに注目しています。
A.入江氏
属性的な多様性は広まってきていますが、中身の価値観の多様性まで踏み込んでいるかどうかが1つのポイントだと思っています。
ダイバーシティとインクルージョンの観点で、多様性があるからこそイノベーションが起きます。従業員が大きな付加価値を創出できる力を持っているという前提に立って「どのように一人ひとりの力を企業全体の力に変えていくか」という点を突き詰めていくとEXの向上にたどり着くと考えています。
日本企業の再生というと大げさかもしれませんが、EXにはそれだけのポテンシャルがあると考えています。
本イベントレポートの全文は、下記URLからダウンロード可能です。
~2022年度最新の調査結果から読み解く~ エンゲージメント向上のカギとなる従業員エクスペリエンス(EX)
HRBrainについて
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