見出し画像

(第23回) でべそのすべて その④ 偶然からの発見

(第22回) でべそのすべて その③ 巨大臍ヘルニアの真実 からの続きです。
前回最後は有料になっていますが、
巨大臍ヘルニアの治療戦略を考えていた僕は、あるとんでもない事実に気が付いたのでした。

その頃僕は、腹腔鏡下の鼠径ヘルニア根治術を広島で開始していました。
(第10回) 【小児外科医の論文解説】小児の鼠径ヘルニア 前編
(第11回) 【小児外科医の論文解説】小児の鼠径ヘルニア 後編
で論文を紹介しています。

大昔から行われていた鼠径ヘルニアの手術法と違って、腹腔鏡の手術では臍からカメラを入れます。
つまりへそを手術で扱う。
ちなみに鼠径ヘルニアは臍ヘルニアを合併しやすいことが分かっていますので、でべその子が多いです。
ちょっと大きな子の腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術では、でべそも一緒に治療できるのが好評です。

では、巨大な臍ヘルニアがあるような乳幼児で鼠径ヘルニアがあった場合は、腹腔鏡手術をすべきなのか…?
今から10年以上前ですから、まだその頃は議論がありました。
…というか、「腹腔鏡手術はすべきでない」派が主流でした。
学会で聞いてみても、「いやぁ、臍はほうっておいたほうが自然ときれいになるからね。巨大な臍ヘルニアがあるときには、腹腔鏡はせずに従来の鼠径部切開でしてますよ」と言う先生方が多くいました。
(さすがにこの当時アンケートをとったわけではないので、僕が知り合いの先生方に聞いた限り…ということになります)
確かにその当時、臍ヘルニアといえば「ほとんどが1才までに自然と治るもの」という認識であり、それをあえて鼠径ヘルニアと同時に生後2か月や3か月で手術するなんて…!となりますよね。
あと、「正直よくわからない」という理由もあったと思います。


すごく大きな臍ヘルニア

例えばこんな、普通こんな時期にしたことがないような臍ヘルニアの手術を鼠径ヘルニアの手術と同時にして、本当にあとで臍がきれいになるのか…?って思いますよね。
放っておけば1才くらいででべそになったにせよ、その後で治した方がいつもやっていることだから安心…となります。
だって、「臍ヘルニアの手術至適時期は1歳~2歳を超えてから」って教科書に書いてあるんですから。
教科書に逆らうのって勇気いります。

僕は逆らいました。
いや、決してやみくもに逆らって手術したわけではないですよ。
きちんと理由があってのことです。
上の写真の子は鼠径部に卵巣が脱出しているまれな卵巣ヘルニアであり、腹腔鏡で内部から観察したかったという理由があります。
また、


テープ負け

この子は臍ヘルニアの圧迫療法中に鼠径ヘルニアが判明したのですが、ちょうど圧迫療法での肌荒れが激しく、臍は少し小さくなったんですがこれ以上の継続が難しく、このままではでべそ一直線だな…という状況でした。

1例1例にそのような理由があり、積み重なって4例で、僕は非常に小さな乳幼児で、巨大な臍ヘルニアと鼠径ヘルニアを合併したお子さんに対し、腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術と臍をきれいにする手術を同時に行ったのでした。

佐伯 勇ら: 巨大臍ヘルニアに対する乳児期早期の根治術―腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術と同時施行した4例 日本小児外科学会雑誌 51(2): 255-8, 2015.

さあ、おへそはどうなったでしょう…
と、ここから有料にしています。
すいません。

(ここから有料になります。
僕の有料記事の売り上げは、基本的に広島大学病院小児外科において小児がんの研究のための基金として使用させていただきます。
続きに興味がある方は、ご寄付のつもりでどうぞ~)

ここから先は

2,177字 / 4画像

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?