瞑想入門 ⑭
アチャン・チャー
智慧があれば、感覚の対象を理解することができます。例えば瞑想中、感覚の対象に触れることもあるでしょう。すると、私たちの心の中に、感情が生じます。また、瞑想中に友人のことなどを思い浮かべたりするかもしれません。そうしたことが起こると、智慧はすぐに、「それは今、関係ありません」「止めなさい」「忘れてしまいなさい」などと警告してくれます。あるいは、瞑想中
「明日はどこどこに行こうかなぁ」
などと妄想をしていたら、智慧は即座に「今は、そんなことを考える時間ではありません」
と警告をしてくれるのです。瞑想中、他人のことが気になりだしたら、「それは私には関りのないことだ」と考えるのがいいでしょう。もしくは、「放っておこう」「すべては不確かで、確実と言えるものは何もない」と考えても構いません。これが瞑想中、思考が浮かんだときの対処法です。何が起きても「確実なことは何もない」と認識し、気づきを保つようにしてください。
瞑想中は、考え事をしたり、修行の内容に疑念を抱いたりしないようにしてください。雑念が生じたりすることなく、ただ、気づきと正知と智慧の三つのみが働いている境地に至るまで、実践を続けるのです。この三つの働きが弱まると、心の中に疑念が生じます。ですが、そのような疑念はすぐに手放して、気づきと正知と智慧の三つのみが残るまで、頑張って瞑想を続けるのです。気づきを常に保てるようになるまで、気づきを育ててください。そうすれば、やがて気づきと正知と智慧の働きを、完全に理解できる時が来るでしょう。
(続く)
アチャン・チャー『Living Dhamma』より
"Living Dhamma", by Venerable Ajahn Chah, translated from the Thai by The Sangha, Wat Pah Nanachat. Access to Insight (BCBS Edition), 30 November 2013, http://www.accesstoinsight.org/lib/thai/chah/living.html .