私たちはなぜ、この世界に生まれてきたのか? ①
アチャン・チャー
今年の雨安居では、私はあまり体調がすぐれず、元気がありません。そこで、新鮮な空気を吸いに、この山の寺へとやってきました。私に面会を求める人々は絶えませんが、以前のように対応することはできません。声もかすれますし、話すとすぐに息が上がってしまいますので。こうして皆さんに会えるということ自体、有り難いことだと思っています。すぐに、皆さんとももうお会いできなくなることでしょう。私の呼吸が止まり、誰とも話せなくなる日もそう遠い日のことではありません。あらゆる現象と同様に、私の身体も縁によって変化していきます。ブッダはこのことを、「 khaya vayaṃ 」と呼びました。これは、「あらゆる条件付けられた現象は、衰え、崩壊する」ということを意味します。
私たちの身体は、どのようにして老い、衰えていくのでしょうか? 氷の塊を想像してみてください。その氷の塊も、元々は単なる水でした。水を凍らせると、氷になるのですね。しかし、氷というものは日光にさらされると、すぐに溶けてしまうものです。ここにあるテープレコーダーと同じくらいの大きさの氷の塊を、日の当たる所に置いておいてみてください。そうすると、氷がどのように溶けていくかが分かるでしょう。私たちの身体が衰えるのも、その氷と同じです。氷が溶けるように、徐々に崩壊していくのです。日光にさらされた氷は、何時間も経たないうちに、溶けて水たまりになるでしょう。これが、 khaya vayaṃ です。あらゆる条件付けられた現象は、衰え、崩壊します。世界が始まった時から、これは変わらぬ法則です。ですから、私たちはこの世に生まれたときから、この法則から逃れることはできないのです。私たちはこの世に生まれた瞬間から、老、病、死といった性質と共にあるのです。
アチャン・チャー『Living Dhamma』より
"Living Dhamma", by Venerable Ajahn Chah, translated from the Thai by The Sangha, Wat Pah Nanachat. Access to Insight (BCBS Edition), 30 November 2013, http://www.accesstoinsight.org/lib/thai/chah/living.html .