四聖諦 ⑥
アチャン・チャー
今日、一人の女性がお寺にやって来て、怒りへの対処法について、私に質問をしました。そこで、私は彼女に、
「今度怒ったら、目覚まし時計をセットして、目の前に置きなさい。そして、怒りが消えるまで二時間待ってみなさい」
と言いました。もし、私たちが自分の感情を思うようにコントロールできるのなら、怒りに対して、
「二時間以内に消えろ!」
と命令することもできます。しかし、私たちの感情というものはコントロール不能なものですから、そうした命令は不可能です。結局、怒りは二時間経っても消えないかもしれませんし、一時間もすれば消えてしまうかもしれません。予想はできないのです。怒りという感情を「自分のもの」と錯覚し、握りしめれば、苦しみを引き起こします。もし、怒りの感情が本当に私たちの所有物であるのなら、それはコントロール可能なものであるはずです。自分がコントロールできないのなら、「自分のもの」とは言えませんよね? どうか、こうした錯覚に騙されないようにしてください。嬉しいときも、悲しいときも、その感情と一体化したり、「自分のもの」と思わないようにしてください。好きという感情も、嫌いという感情も、私たちの所有物ではありません。一過性の現象です。
この中に怒ったことがある人はいますか? 怒ったとき、いい気持ちがしましたか? それとも、嫌な気持ちになりましたか? 嫌な気持ちになったのなら、なぜそうした感情を握りしめるのでしょうか? そのような感情に執着し、握りしめるような人は、賢い人間とは言えません。生まれてこのかた、いったいどれほど怒りの感情に振り回されてきたのですか? 怒りの感情は、家族全員を諍いに巻き込み、大喧嘩をさせることさえあります。それにも関わらず、私たちは怒りの感情に執着し、それを握りしめ、その結果として苦しんでいます。この怒りの感情に気づくことができなければ、私たちはいつまでも苦しみ続けることになります。それが、輪廻の世界の真実です。ですが、こうしたからくりを知れば、私たちは輪廻を乗り越えることができるのです。
(続く)
アチャン・チャー『Living Dhamma』より
"Living Dhamma", by Venerable Ajahn Chah, translated from the Thai by The Sangha, Wat Pah Nanachat. Access to Insight (BCBS Edition), 30 November 2013, http://www.accesstoinsight.org/lib/thai/chah/living.html .