静止しつつ流れゆく川 ②
アチャン・チャー
サマーディでは、心を一点に集中させます。では、何に心を集中させるのでしょうか? 「心のバランス」をとることに、集中するのです。通常、多くの人々は、自分の心を静めようとして、瞑想を実践します。彼らはよくこう言います。
「座って瞑想をしようとするのですが、たった一分でさえ、心が静まらないのです。心は常にさ迷い、次の瞬間にはどこかへ飛んで行ってしまいます。一体どうすれば、心を静めることができるのでしょうか?」
そうした場合、無理やり心を静める必要はありません。そもそも、「動き」があるからこそ、智慧が生じるのですから。皆、
「心がさ迷うので、何とか引き戻します。でも、またすぐさ迷ってしまって、また引き戻すことになる。瞑想中、何度もその繰り返しなのです」
と言います。瞑想中、心がさ迷うたびに、それを引き戻そうとしているというわけです。
彼らは自分の心があちこちさ迷っていると感じていますが、実際にはそう思い込んでいるだけです。例えば、この法堂を見て、皆さんは「広いなぁ!」と言いますよね。でも、実際には全然広くはありません。法堂を大きいと感じるかどうかは、その人の感じかた次第です。実際のところ、この法堂は広くも狭くもなく、「ただこの大きさ」なだけです。けれども、私たちはいつも、自分の感情に基づいて、それを「広い」とか「狭い」とか決めつけるのです。
(続く)
アチャン・チャー『Living Dhamma』より
"Living Dhamma", by Venerable Ajahn Chah, translated from the Thai by The Sangha, Wat Pah Nanachat. Access to Insight (BCBS Edition), 30 November 2013, http://www.accesstoinsight.org/lib/thai/chah/living.html .