四聖諦 ⑭
アチャン・チャー
苦しみという真理を理解したとき、私たちは苦しみを手放せるようになります。苦しみの原因を知れば、もうそのような原因を作る行為は止めるでしょう。そして、代わりに苦しみを滅するための修行を始めるのです。苦しみを滅するための修行とは、
「これは『自己』ではない」
「これは『私』でも『彼ら』でもない」
と物事を観察することです。そのように現象を観察すれば、苦しみは消滅します。私たちは目的地に到着したら、自然と歩みを止めますよね。それと同じです。これが「苦しみの滅」です。それは涅槃へと近づくことを意味します。別の言い方をするなら、前に進むのも、後退するのも、立ち止まっていることも、どれも苦しみなのです。では、前進も、後退も、立ち止まることもしなければ、どうなるのでしょうか? そのとき、何が残るのでしょうか? そこに至ったとき、私たちの心と身体の活動は停止するのです。これが「苦しみの滅」です。理解するのが難しいですか? 今は難しく感じるかもしれませんが、皆さんが熱心に弛まず修行を続けるなら、やがて現象を超越し、この教えを理解できるようになるでしょう。そのとき、皆さんの苦しみは消滅するのです。これがブッダの究極の教えであり、修行の終着点です。ブッダの教えのゴールは、あらゆることを手放すことにあるのです。
今日の法話で、私が何か間違ったことを言ったのなら、どうかお許しください。ですが、性急に判断をすることは避けてください。まずは、虚心坦懐に話を聴いてみてほしいのです。例えば、私が皆さんに、
「この果物はおいしいですよ」
と言っても、その言葉を鵜吞みにしてはいけません。まだ、実際に食べていないのですからね。今日、私が語った法話も、それと同じです。もし、その果物が甘いのか、酸っぱいのかを知りたければ、手に取って味見をしてみることです。そうすれば、甘いのか、酸っぱいのかが分かるでしょう。そうして初めて、私の言っていることが正しいのどうか、分かるのです。ですから、今日、私が皆さんに語った法話という「果物」を、捨てずに家に持ち帰り、自分自身で味わい、その味を知ってほしいのです。
(続く)
アチャン・チャー『Living Dhamma』より
"Living Dhamma", by Venerable Ajahn Chah, translated from the Thai by The Sangha, Wat Pah Nanachat. Access to Insight (BCBS Edition), 30 November 2013, http://www.accesstoinsight.org/lib/thai/chah/living.html .