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四聖諦 ⑮

アチャン・チャー

 ブッダには、師はいませんでした。あるとき、一人の行者がブッダに、
「あなたの師匠は誰ですか?」
と尋ねると、ブッダは、
「私には師はいない」
と答えました。行者はただ頭を振り、その場を立ち去っていきました。ブッダはとても正直な方でした。ですから、真理を理解することも、受け入れることもできない人に対しても、ブッダは常に真実を語ったのです。私が皆さんに、私の言うことを鵜吞みにしないでくださいと言ったのは、ブッダが、
「自分で理解をしていないのに、他人をやみくもに信じるのは、愚かである」
と説いたからです。これが、ブッダが
「私には師はいない」
と言った理由なのです。これは事実です。しかし、この言葉は慎重に受け止める必要があります。このブッダの言葉を、誤解して受け止めないように注意してください。この言葉を誤解して理解すると、自分の師に対する敬意が揺らぐことになってしまいます。ですから、皆さんは不注意に
「私には師はいない」
などと言わないようにしてください。何が正しく、何が間違っているのかを教えてくれる師匠を頼りにし、その言葉に従って、瞑想実践を進めていくのです。
 
 今日は、ここに居る全員にとって、幸運な日です。皆さんとお会いできる機会を持て、嬉しく思います。普段、私たちは近所に住んでいませんから、滅多に会うことはできません。今日、こうして会うことができたのは、何か特別な縁があったからに違いありません。ブッダは、生じるものにはすべて原因があるはずだと説きました。このことを忘れないようにしてください。私たちが出会ったのには、何か必ず原因があったはずなのです。もしかすると、前世で私たちは家族だったのかもしれません。その可能性はあります。今日、ここに別の瞑想指導者が来る可能性もあったのに、実際に来たのは私だったのですから。そして、私たちは今、この瞬間にも、新しい原因を作り続けているのです。
 
(続く)

アチャン・チャー『Living Dhamma』より
 
"Living Dhamma", by Venerable Ajahn Chah, translated from the Thai by The Sangha, Wat Pah Nanachat. Access to Insight (BCBS Edition), 30 November 2013, http://www.accesstoinsight.org/lib/thai/chah/living.html .
 

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