四聖諦 ⑤
アチャン・チャー
ダンマを学ぶとは、苦しみが生じないようにするために、現象の真の姿を理解することです。もし、間違った考え方をするのなら、私たちは自然の法則(ダンマ)と対立することになります。病気に罹り、入院した場合を想像してみてください。大抵の人は、
「死にたくない。病気を治したい」
と考えますよね。でも、それは間違った考えです。そうした考えは、苦しみを生み出すだけです。そうではなく、
「死ぬときは死ぬ。治るときは治る」
と考えるのが、正しい考え(正見)なのです。なぜなら、私たちには、自分の健康状態を望むようにコントロールする力など無いのですから。そのように考えることができれば、死のうが生きようが、何も心配はいりません。
「何が何でもよくなりたい」
「死ぬことは恐ろしい」
こうした考えは、現象を正しく理解していないことによって生じます。そうではなく、
「良くなったらなったでいいし、良くならなくても構わない」
と考えるべきです。そうすれば、間違った行動をとることもないし、恐怖に泣き叫んだりすることもありません。なぜなら、そのとき、私たちは自然の法則に則った生き方をしているのですから。
ブッダはこのことを、完全に理解していました。ブッダの教えは常に正しく、決して時代遅れになるということはありません。ですから、現代社会においても、ブッダの教えは有効なのです。ブッダの教えを学ぶことによって、私たちの心は平安になり、幸福に生きることができます。
仏教には、無我という教えがあります。「自己」という概念への執着を断ち切るためにも、無我について学んでください。私たちが人生において苦しむのは、「自己」という概念に執着しているためです。このことを、よく覚えておいてください。
(続く)
アチャン・チャー『Living Dhamma』より
"Living Dhamma", by Venerable Ajahn Chah, translated from the Thai by The Sangha, Wat Pah Nanachat. Access to Insight (BCBS Edition), 30 November 2013, http://www.accesstoinsight.org/lib/thai/chah/living.html .