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【#9久野 将宗】経験から得た学びを次の支援に活かす

HuMAの活動に携わる人々に注目するインタビュー。第9回目は、2024年に能登地方を襲った地震と豪雨災害の支援活動に携わってきた、久野(くの)将宗さん。JMAT(日本医師会災害医療チーム)の一員として医療支援を行いながら、HuMAの担当理事としてミッションのマネジメントを担い、被災地からの情報発信にも尽力してきました。

能登半島地震救護所で

より深く、詳しい情報をHuMA会員へ

2024年1月1日に発生した震度7の地震、そして9月に発生した豪雨災害。一連の災害で甚大な被害を受けた石川県・能登地方に、HuMAからは延べ約120名の医療従事者が赴き、様々な支援活動に従事してきました。
その様子はHuMAのホームページFacebookでも公開しているのですが、私が今回の支援活動において大切にしていたのがHuMA会員に向けた情報発信でした。

HuMAの会員数は現在約490名(2024年12月末時点)ですが、その全員が被災地での活動に直接的に関与するわけではなく、被災地に派遣されているメンバーと派遣されていないメンバーとの間にはどうしても情報の差が生まれてしまいます。
離れた場所から被災地に心を寄せている方も多い。今行われている活動の背景には何があるのか?どんな課題があり、どんな対策をとろうとしているのか?より深く詳しい情報を会員の皆さんは求めている。
そのことに改めて目を向けたときに、HuMA会員だからこそ共有できる支援活動の実態を伝えていくことが必要だと考えました。

会員向けの情報発信は、支援活動の期間中毎日行っていました。会員の中にも様々な立場の人がいるため、伝え方や表現には十分配慮しながら、できるだけリアルな情報を伝えるよう努めました。
発信を続けていく中で会員の方々から支持の声も届くようになり、現地にいるメンバーだけでなくHuMA全体で活動をしているのだと実感することができました。

被災地の“日常”を取り戻す

能登地方でのHuMAの活動の一つに、災害により人手不足が深刻化してしまった高齢者施設での支援がありました。
食事や入浴の介助など日々の生活のサポートを中心に、ご利用者の皆さんのお誕生日会やハロウィン、ミニ運動会といった季節の行事も、施設スタッフの方々とHuMAメンバーで一緒に実施してきました。
もともと行われていた行事を「被災しているから」と中止にしてしまうのではなく、行事を通して少しでも「日常に戻っていく」ことを感じてもらいたいと私たちは考えています。

高齢者施設でのミニ運動会

2013年、フィリピン台風での支援活動に参加した時のことです。クリスマス前の災害でパーティーができなくなってしまったことに子どもたちがショックを受けていると聞き「それなら私たちでパーティーを開こう」と私もギターを抱えて現地に向かいました。
大変な状況下でのクリスマスではあったけれど、歌やゲームで楽しそうに笑顔を見せてくれた子どもたちの姿を印象深く覚えています。

能登でも、HuMAメンバーの報告で被災地の皆さんの心に寄り添った活動が行われている様子を見て、涙がこぼれそうになる時もありました。
活動は2024年10月末で一旦終了しましたが、私たちの活動が一人でも多くの方の笑顔につながっていればと思います。

広い視野と「やわらかいマインド」を持って

支援活動は決して上手くいくことばかりではなく、活動の度に新たな問題にも直面します。
しかし一つ一つの経験からは得られるものが必ずあり、その学びを次の活動につなげていきたい。それが自分の役割だと考えています。

気をつけなければいけないのは、どこかに見落とされている問題がないかということ。
例えば、近年の災害では避難所の環境改善がクローズアップされていますが、実は1995年の阪神・淡路大震災でも同様の問題は起こっていました。当時は急性期医療に焦点が当てられていて、避難所の問題はその影に隠れていたのです。

災害支援において焦点が当たるテーマは、その時々で変わっていきます。しかし、皆が注目していないところで支援の手が必要とされている場面がある。
私たちは、広い視野で物事を見なければならないと思うのです。

被災地の方々の生活支援や心のケアもその一つです。
災害が起こると一時的に多くの注目と支援が集まりますが、ある時期を過ぎると被災地への関心が薄くなる傾向にあります。

切迫した状況を乗り越えてもなお、困難は続いている。
「いつも被災地のことを考えているよ」
「困っていたらHuMAは来るよ」
そのような「やわらかいマインド」にHuMAらしさがあると思っています。


熱意あるメンバーたちと共に

災害医療支援活動には多くの方々の支援が必要です。一人ひとりの協力が支えになります。HuMAについて、より詳しく知りたい方はこちら

[TEXT:堂本侑希(広報ボランティア)]


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HuMA (NPO 災害人道医療支援会)
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