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捨てるための日記36_「ゴヤ《戦争の惨禍》(国立西洋美術館)」
ゴヤの「戦争の惨禍」が見たくて国立西洋美術館へ行った。企画展には何度か足を運んだけれど、常設展を見るのは初めて。
一つ一つの版画について語ることは避けるけれど、このタイミングで「戦争の惨禍」をまとめて見ることができて良かった。
ロシアによるウクライナ侵攻、パレスチナでの虐殺がなおも続いている現在、この展示がされたのは意義あることだと思う。
ゴヤの「戦争の惨禍」はスペイン独立戦争を描いたものだ。スペインにもフランスにも肩入れしていない、ただ暴力の悲惨さが延々と描かれる。
たまたま今週、NHKで視た「映像の世紀バタフライエフェクト」が黒人ジャズシンガー、ビリー・ホリデーを中心としたものだった。彼女が歌う「奇妙な果実」は、木につるされた黒人の遺体を果実に見立てている。
そんな「奇妙な果実」をゴヤも描いていた。より人間性を剥奪された形で。
人間はときに、とても慈愛や博愛に満ちた行動をおこすけれど、わりと頻繁に残虐な行為をする。そして善行に比べて悪行のバリエーションは数限りない。
神は全き善性で完璧でありながら、どうして人間というものの残酷さをお認めになったのか。それともそれは人間の「自由意志」の結果なのか。キリスト教でなくともそんな疑問がふつふつと湧いてくる。
ヒューマニズムを信じたい気持ちもあるけれど、この残虐性も含めて「人間」で、悪逆の果てに進歩した分野もある。人類が改めてその悪行を許さないということを確認したりもする。
ゴヤの最後の版画のタイトルは「真理はよみがえるのだろうか」だ。