「体重が減らなくても、心は軽くなってるんだからOK!」
トレイルランニングを始めたきっかけは単純だった。「痩せるため」。でも、いつの間にかその目的はどこかへ飛んでいった。スタートは毎朝の体重計だったが、今や山の中がその舞台だ。最初は毎日、体重計に乗るたびに一喜一憂していた。0.5キロ増えた?前日は走ったのに!1キロ減った?よっしゃ、スーパーマンだ!だがその数値が動かなくなった時、私は焦りと絶望に包まれた。「あれ、全然痩せないんじゃない?」
しかし、ある日気づいたんだ。山道を走っていると、いつもの自分がそこにいないことに。疲れても文句を言うどころか、なんか心が軽くなっている。これって、ランニングの効果?それとも山の魔法?はたまた、木々の間からさす朝日のせい?謎だ。でも、確実に言えることがある。体重計の針は動いていないが、心の針はどんどん軽くなっている。
トレイルランはただの運動ではない。冒険だ。足を前に進めるだけで、新しい景色が広がる。木の間を抜ける涼しい風、鳥のさえずり、草木の香り。ときどきぬかるんだ泥道に足を取られて滑りそうになったり、小さな川を飛び越える瞬間にスーパーヒーローの気分になったり。「ああ、これって体重とは全然関係ない楽しみだな」と感じた瞬間、全てが変わった。
気づけば、心の中で対話が始まっていた。ランニングを始めた頃の私と、今の私の会話だ。
「体重は減った?」
「いや、全然。でも、心が軽くなってるよ」
「それって、意味あるの?」
「もちろん。体重なんて、ただの数字だよ。大事なのは、自分がどう感じてるかさ」
いつの間にか「痩せるために走る」から、「楽しむために走る」へと目的がシフトしていた。数字は消え、代わりに笑顔が残った。それに、山道を駆け抜けるたびに、新しい自分と出会えるのも楽しい。「あの坂を走り切った自分、すごいじゃん!」とか、「あの急斜面をよく登ったな、私!」とか、自分を褒める回数が増えた。
そして、何より素晴らしいのは、体重が減らなくても、体は確実に強くなっていることだ。息切れするまでの時間が長くなり、筋肉痛の回数が減り、山を駆け上がる度に自信がついてくる。「体重は変わらなくても、確実に私、成長してるんだな」と気づいた時、その事実が何よりも嬉しかった。
体重計は相変わらず嘘みたいに動かない。だけど、山を走るたびに、心は少しずつ軽くなっていく。最初の一歩を踏み出した時の緊張感が、今では冒険心に変わり、足元の石や枝も、ただの障害物じゃなくて「次の挑戦」として楽しめるようになった。
だから、もし「体重が減らなくて落ち込んでる」って思ってるなら、ちょっと考え方を変えてみよう。数字なんて、ただの参考程度。大事なのは、その先に広がる自分の世界。そして、その世界で心が軽くなること。体重が変わらなくても、自分自身が変わっていることを感じるはずだ。トレイルランニングは、その素晴らしい旅の入り口に過ぎないのだから。