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タイムが伸びない日=景色を楽しむチャンスの日

ランニングにおいて、タイムが伸びない日は時に自分との戦いを仕掛けてくる。それは、まるで毎朝のラジオ体操で突然出現する謎の軍団が「今日はスローペースでどうだ?」と挑発してくるようなものだ。そう、タイムが伸びない日、足が重い日、そして「今日こそベスト更新!」と意気込んだものの、秒針はまるでこちらを嘲笑うかのように冷酷だ。だが、そんな日こそ「景色を楽しむチャンスの日」なのだと、ある時ふと思い直した。

例えば、いつも目もくれない街路樹。普段なら通り過ぎるだけの存在が、今日は何だか妙に存在感を放っている。「こんなに緑が生き生きしてたっけ?」と思わず立ち止まりたくなるほどだ。いや、ランニング中に立ち止まるなんてありえない…なんて言ってたのはどこの誰だ。タイムが伸びない日は、視界も広くなる。木漏れ日が地面に描く影絵をじっくり鑑賞する余裕が生まれる。「ああ、これが自然のステンドグラスか」なんて気取ったことを考えたりするのも悪くない。

いつもはタイムを追いかけて必死に通り過ぎる公園のベンチには、今日もあのご近所の犬がのんびりと寝そべっている。名前も知らないが、タイムが伸びない日に出会うと、妙に親近感が湧く。「お前も今日はのんびりしてるんだな」と心の中で話しかける。そして、ふと考える。もしかして、犬もラジオ体操軍団の一員だったりして。

そして、コースの途中にある小さなカフェ。ランニングコースの端にひっそりと佇むその場所は、これまでただの背景だったのに、今日はなんだかコーヒーの香りが鼻をくすぐる。「ちょっと寄っていこうか」なんて、普段の自分なら絶対しないことを思いつく。そして、ここで「オトコジュクポーズ」ならぬ「今日も頑張ってるポーズ」で一枚パシャリ。タイムを追い求めない日には、こうした小さな楽しみがたくさん隠れている。

それに、タイムが伸びない日は心の中の「過去の自分」なんて無視して、むしろソファとポテチとコーラと競争してる気分だ。タイムなんてどうでもいい、今日は自分のためのリラックスランニングだ!と言い聞かせながら、たまには「スローペースで景色を楽しむ」という新たな技を駆使する。おそらくこれこそ、ラジオ体操軍団の陰謀だろう。まんまと術中にはまってしまったが、そんな日はむしろこちらの勝ちと言える。

帰宅後、タイムを確認する。いつもなら絶対に満足できない数字が並んでいる。しかし、今日はなぜか「これもいいか」と思える。それは、「タイムが伸びない日=景色を楽しむチャンスの日」だと気づいたからだ。そして、これからはこの気持ちを胸に、たまには立ち止まり、風景と会話するランニングを楽しんでみようじゃないか。

タイムを競うだけがランニングじゃない。タイムが伸びない日こそ、景色と向き合い、普段見落としているものを見つける絶好の機会だ。ラジオ体操軍団に感謝する日が来るなんて思わなかったが、たまには彼らに負けても悪くない。今日もタイムは伸びなかったけれど、いつも以上に心が豊かになった気がする。さて、明日はどんな景色が待っているだろうか?

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