2 コルドバ ベテラン撮影コーディネーターの気ままな旅のぶらり旅日記
◆5月2日木曜日 コルドバのパティオ祭りと鉄格子とバルコニーコンクール
2012年に世界遺産無形文化財なったパティオ祭りは100年以上前から行われており、今年は7つの地域に点在する52のコンクール参加、11のコンクール不参加、合計63のパティオからなる。この祭りは住人たちが丹精込めて育てた花木で飾り付けた個人のパティオ(中庭)を一般公開するもの。普段表通りからは全く見ることのできない秘密の花園の公開とあって、今では世界中から花好きたちがその様子を見に来る。人気のパティオは行列ができて一時間待っても見られないことも。昔は長屋の貧しい住人たちが、空き缶などにどこからかもらってきた枝から育てた苗を植え、パティオを飾ったことから始まっている。高い壁に下げられた多くの鉢に水やりするのは大変で、棒に缶などを括りつけたもの、ホースにパイプをつなげたものなどそれぞれが工夫した道具で水やりする。会期中も30度を超える猛暑のコルドバでの水やりは、とても大事な作業だ。
開場時間20分ほど前にKさんの家を出ると、昨日のパティオや一番人気の一つマロキエス通りの前には既にそれぞれ列ができていた。私達はこれらの列を横目に、地図の右下から右上に向かって廻って行き、段々街の中心に戻っていくコースに進む。こうすることでほとんど待たずにたくさんのパティオを見て回れる。パティオ祭りを毎年歩き回るKさんと、この街をかなり歩きこんだ私は、あちこちのパティオをショートカットしながらいく。
今日のお目当ての一つは、以前取材したルート4、サンティアゴ・サンロレンソ地区のティンテ通りのアナさんを訪れること。私はパンデミックもありここ何年か来られなかったが、彼女は去年一昨年とコンクールでも見事一位を取られた大ベテラン。15人ぐらいの列ができていたが、間もなく入ることができた。アナさんはキュッとコルドバ名産のフィーノをひっかけた所。お元気だ。直ぐに私を思い出して「ここはあなたの家だからいつでもきてね」と最高の歓迎の言葉を。アナさんは子供の時おばあさんの花の手入れを手伝いながら、瓶のキャップに苗を育てる事を学び、このパティオの花づくりに至った。数年前に私が旅先で見つけてプレゼントした小さなカラフルな植木鉢の所に私を連れて行き、あの時からこのサボテンを植えてこの子たちはずっとここにいるわ、と見せてくれた。彼女にとって全ての植物は子供たちなのだ。しかしすぐにこの植木鉢と私の事を思い出してくれるなんて、本当にうれしい。彼女のパティオは古い家の3方の壁と、奥の屋根のあるスペースからなる。レモンにオレンジを接ぎ木した木や、奥の壁にはキャップに植えられたミニ植物が所せましと下がっている。何百とある鉢に植えられたものすごい種類と色の美しい花たち。そしてコバルトブルーに塗られた植木鉢が白壁に映える幸せな空間。後日Kさんから、今年もアナさんが優勝したとの知らせが。おめでとうございますアナさん、いつまでもお元気で。
もう一人訪れたかったのは、タサス広場のクリスティーナさん。パティオに入っていくと後ろ向きに座っている彼女が。「クリスティーナ」と呼ぶと振り返ったのはなんと彼女にそっくりな双子の姉カルメンさんだった。妹が急に容態を崩して入院したので、急遽セビリアのカサージャからこのパティオ祭りの手伝いに来たとの事。会期中住人たちは毎日11時から14時、18時から22時まで11日間訪問者をアテンドしなくてはならず、老いたご主人一人ではとても無理。大変なことだ。
クリスティーナさんはセビリア生まれだが、建築家としてコルドバを調べていくうちにコルドバのパティオの素晴らしさを知り、この街の伝統的な街並みを守るため一時は政治家にまでなった人。長屋だった廃墟を買って第一回目のコンクールで優勝したパティオをリフォームし、公開している。私は取材の時彼女のパティオと人生についての話をじっくり聞く機会に恵まれ、以後私達は友人になった。ここは長屋時代の住人の写真と記録がまず入り口に展示されていて、そこを抜けると井戸のあるパティオは広くて、大きな木の木陰が素晴らしい雰囲気と居心地を作り出している。またこの期間以外もコンサートなどの文化イベントが開かれる。クリスティーナさん、お大事に。
今日のランチはメキシカン。シエリート・リンド・カフェ。ポップな飾りのカラフルなお店。おまかせケサディージャは、私がピーマンが駄目なので、Kさんの分とは別に4種、合計8種もの異なった本場の味を作ってくれた。そして本日のデザートはスイカの辛いシャーベット。スイカの甘味と辛味が絶妙な組み合わせ。カクテルが飲めなかったのが残念(笑)
1日に2つ、初日の昼までで合計12のパティオと、たくさんの鉄格子とバルコニー、そして1日に6箇所の十字架を見ることができた、大満足のコルドバでした。