32日目スペイン・ポルトガル 3,000kmのロードトリップスペインベテラン撮影コーディネーターのぶらり旅
32日目
宿のバールで朝食を済ませる。スペインのバールは朝食、食前酒、タパスに昼食、おやつに午後の食前酒、夕飯に食後の一杯など朝から晩まで、子供から大人までが利用できる場所。ここには無料で読める新聞も何紙かあるし、午後に村人が遊ぶためのトランプやドミノも置いてあった。テレビも一日ついているし、スペイン人にとってのバールは第二の我が家のような所だ。
アストルガ旧市街に車で行き、ガウディの宮殿を見学。建物の外観は人目をひく石造りのもの。形は確かにガウディの他の建物に共通したものがある。ここは巡礼者美術館にもなっていて、巡礼が始まった9世紀からの像などが展示されている。しかし中はどうなのだろう?地下はすっきりしていて、ガウディらしいが今の照明ががっかりさせる。一階も一部には彼らしさが感じられるが、全体的には色々な要素がごちゃごちゃしていて、どうもガウディらしさがあまり感じられない。私としてはがっかりだった。
街を少し散策したが、暑くなってきたので12時頃に車でレオンに出発。一時間ぐらいでMuseo casa botines。レオンは一転して都会。大きくて立派な建物が沢山あり、交通量も多い。面白いのは車の人の信号にあと何秒で信号が変わるかを表示する掲示板がある事。歩行者用の信号ではよくあるが、これは初めて見た。
1時少し前にうまく路駐でき、2時に閉館してしまうかもしれないので急ぎ足。裏は修復中で幕が掛かっていたが、表に回ると圧巻の存在感。
鉄格子、入り口のドラゴンはガウディらしいデザイン。入場料9€を払い、まずはスペインの2階、日本の3階に階段を昇って行く。ここではガウディ建築家の夢というガウディの建築に対する考え方、デザインの発想のもとになった自然の色んなものとガウディのデザインなどが展示されている。また半分は当時のオーナーの家の再現スペース。何故か歯医者スペースもあるこの展示は当時の富裕層の生活が垣間見れる。キッチンには立派な湯かし器があり、トイレや浴槽も細部までデザインにこだわった空間。上の階ではガウディの時代の芸術作品を見る。マラガの作家リカルド・ベルドゥゴの港の絵があった。1階に行くには0階から行くようにと言われたので、次は0階。ここはこの建物の歴史と当時富裕層向けの生地屋と銀行だった頃の様子が見られる。どれも映画撮影セットのように美しい。特に半地下になっているのに外光がうまく取り入れられていて、天井高の細い柱だけの広い空間は、機能的にできている。一階は企画展。「彫刻の革命 ロダンからアラン・ジョーンズまで」短大で彫刻を選択していたので、興味がある。私の好きなベラクーシとジャコメッティの作品がなかったのは残念だが、マン・レイやマラガの友人エレーナ・ラベロンの作品があったのはうれしかった。小さいけれど各々の作者らしい良い作品が多かった。大満足で街に繰り出す。
メインストリートにはモデルニズムの建物が沢山ある。大聖堂は少し奥まった所にあって周りの建物も大きいのでなかなか見えてこないが、Aの記憶に頼ってたどり着く。外回りだけでもものすごく広い、白っぽい石造りの外観はとてもエレガント。スペイン全盛期の王様はこのカスティーリャ・イ・レオン地方のカソリックだったので、特に立派なのだろう。周りには一部昔ながらの街並みが残る美しい街。しかし暑いしお腹はすくしで、食べ物屋を探しながら歩く。レオンは飲み物を頼むとタパスがついてくると、車中でAが言っていた。たくさん食べるとこの後のドライブで眠くなりそうなので、タパスにしようかと話していたら、年配の男性が「ここの店ではタパスは牛タンが絶品だ」と他の人に言っているのが聞こえてきたので、早速入ってみる。どこも一杯だったが調度目の前の女性たちが立ち、カウンターに座れた。ラッキー。ノンアルコールビールと牛タンシチューを頼む。パンがついて3,80€。牛タンは皮つきで煮込んであってちょっとグロテスクだが、とても柔らかく濃厚で素晴らしいお味。他にはトルティージャ、ポテトの輪切りのフライ、ムール貝などがあると言っている。ではもう一軒別の店に行ってみようと近くの店に入る。飲み物についてくるタパスはスタッフドエッグと、フライドポテトにパプリカとニンニク風味のソースが絡められたもの。しかし他の人が食べている、角切りのフライドポテトに卵とチョリソをほぐした肉が乗っているのがおいしそうだったので、それも頼む。カウンターの女の子たちはとても働き者で、感じが良い。
思った味のものが食べられ、満足してもう暑いので最終目的地カンタブリア地方のサンタンデール近郊の村Pamanesへ向かう。260km 2時間半の道程。途中車が少なく、ずっと高速だったのでA が運転に挑戦。しかし私自身が運転するより緊張した。1時間ほどで交代し夕方無事に到着。
この家は2019年に買った築100年以上の建物で、一階は住居になっていたが、2階は全て彼らがリフォームしたそうだ。広々とした二人のセンスが素敵なカントリーハウス。Cは写真家でAの地元の古い友人、Mは中学の英語の先生。まずは近所に散歩に出る。すぐ裏は自然公園で、その反対には何軒か住居があり、すぐに牛たちのいる牧草地になる。緑が多いのどかな所。気温は25℃位、湿気があるが、涼しい。今夜はコンサートなのでCが用意してくれたこの地方の豆の煮込み料理を、Mが作った食器で。サラダ、チーズなどで夕飯。
コンサートは近くの村の宮殿に設置されたテントの会場で。この辺りは鉱山が沢山あり、大金持ちが作った宮殿がたくさん建っている。以前仕事をしたフラメンコギターのダニ デ モロンと中世のビオラ等の楽器で奏でるフュージョン。たおやかに流れる調べが心地よい。終わった後は近くのバルでMのいとこの家族を交えてビールを飲む。いとこの息子が演劇を学びたいと言うので、ミュージカルを学ぶのはどうかと提案すると、お父さんは音楽教師、お母さんはダンサーで、彼もコーラスに入っているて、急にやりたい事が見つかったと喜んでいた。とてもハンサムな青年なので、楽しみだ。長い1日も終わり。
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