ドラマ『琅琊榜』で習いたかった中国語~第十六集②
サブタイトル「苦悩」の続き。梅長蘇が夏冬と聶将軍のお墓参りをして帰路についた後、蘇宅でのシーンに変わる。
我发现卓青遥最近一直跟踪沈追 也不知道到底想干什么
卓青遥が沈追を尾行していると黎綱が梅長蘇に報告する。
「我」は一人称、「发现」は「気付く」「見つける」という動詞で、ここではその後ろに続く内容に「気付いた」と言っている。中国語では助詞の類が動詞についてなくても、必ずしも時制が現在とは限らない。文脈次第で過去にもなり得る。
何に気付いたかというと、謝玉と手を組む天泉山荘の「卓青遥」が「最近」、「一直(=ずっと)」、「跟踪(=追跡する、尾行する)」、そして追跡の対象は「沈追」である。「跟踪」の方も先程の「发现」と同様、文脈から「追跡している」「尾行している」という時制になる。セリフ前半を直訳調にすると「私は卓青遥が最近ずっと沈追を尾行していることに気付きました」となる。
「也」についてはおそらく「~だけれども」という前文に対し、後文で反対のニュアンスを導く副詞と思われる。「不」は直後の「知道(=分かる)」を否定しており、「到底」は「いったい」、「想」は直後に動詞があるので「~したい」、「干」は「する」、「什么」という疑問代詞がつくので「想干什么」は「何がしたい」と言うことになる。「不知道到底想干什么」に主語を補足すると「我(=黎綱)不知道(卓青遥)到底想干什么」であろうことから、「也」はおそらく「我」と「不」の間に入り、主語が同じ「我」で共通の前文に対し「发现(気付く)」と反対のニュアンス「不知道(わからない)」にかかり、「私は卓青遥が最近ずっと沈追を尾行していると気づきましたが、いったい(卓青遥が)何をしたいのかはわからない」という意味であろう。字幕では報告としてシンプルな表現になっている。
第十二集から沈追は不審な戸部の官船の積み荷を調べており、皇太子が蘭園事件で失脚した楼之敬が管理していた闇炮坊(非合法爆竹工場)に運ばれていることを突き止めている。これに気付いた謝玉が第十五集で卓鼎風らに沈追の殺害を命じていた。
黎綱の報告から謝玉が動き出したことを察した梅長蘇は、甄平に沈追の護衛を命じた。
带了四个人还不够啊 这京城里大白天的能出什么事情
闇の両替商についての情報を得て(実は沈追をおびき出すための罠)、お忍びで様子を調べに行く沈追。従者は危険だと警告するが、沈追は意に介さず言った。
「带」は「引き連れる」、「了」は動態助詞でここでは仮定の動作として用いている。動態助詞の後には数量を表す表現がセットになり「四个人(4人)」、つまり「4人引き連れたとしても」という意味になる。「还」は「まだ」、「不够」は「不足である」「足りない」、文末助詞「啊」はここでは「4人引き連れてもまだ足りないか?」という疑問の語気であろう。
「这」は「この」、「京城」は「都」、「里」は「~の中」なので、「这京城里」はニュアンスとして「この(人が多い)都(の中)で」ということになる。「大白天」は「真っ昼間」、「的」はおそらく「是的(shide)構文」の「的」で、「是」が省略されている。強調したいのは「这京城里大白天」で、本来「是」は文頭であろう。「能」は可能性を表す助動詞で、「出」は「生じる」、「什么」は「何か」、「事情」は「事」のため、全体で「この都の中で真っ昼間に何か事が生じるものか(起きるはずがないと言う気持ち)」となる。
沈追が赴いた先で、最近動きが不審な卓青遥を尾行していた蕭景睿は、沈追が襲われるところに遭遇する。卓親子が二人がかりで襲撃するため、密かに護衛していた甄平も手こずってしまい、あわやと言う時に蕭景睿が割って入り、卓鼎風の刃を沈追の代わりに受けて負傷した。その後靖王配下の列戦英も兵を率いて駆け付けたため、卓親子は退散した。
多谢萧公子仗义援手
蕭景睿に命を救われた沈追がお礼を言った。
「多谢」は「ありがとう」と謝意を表す言葉で、「萧公子」は「蕭の若君」で「公子」は官僚の子息に対する敬称である。「仗义」は「義理堅い」、「援手」は書き言葉で「助ける」という意味である。心からの謝意を表すために正式で固い表現をしたと思われる。「蕭の若君の義理堅いお力添えに感謝します」というところか。
蕭景睿の苦悩が深まりそうな展開。第十六集はあともう一回見ていきます。