ドラマ『琅琊榜』で学びたかった中国語~第三十九集③
サブタイトル「形勢逆転」の通り、懸鏡司が封鎖され夏江は捕まった。
人死了 就什么都没了
これで梅長蘇は懸鏡司から救い出された。支えられながら出て来た梅長蘇を見て、拘束されている夏江が烏金丸の件を踏まえて言った。
▼人死了 就什么都没了
(rén sǐ le jiù shénme dōu méi le)
「人」はそのまま「人」、「死」も日本語と同じで「死ぬ」、そして直後のこの文章一つ目の「了」は仮定の動作に用いる動態助詞で、「人死了」は「人が死んだら」という意味になる。
「就」は頻出の前文を受けて結論を示す「~ならば~だ」、「什么」+「都」で「なにも」「いかなるものも」と言う意味で、ある範囲では例外が無いことを示している。「没」が存在の否定「ない」、文末の「了」は状態の変化を表す文末助詞なので、「没了」で「無くなる(無くなった状態になる)」の意味になる。
全体で「人が死んだらなにもなくなる」となり、字幕の方が自然な表現になっている。
これを聞いて血相を変えた蒙大統領は、夏江の首枷を掴んで「どういう意味だ」と詰め寄った。梅長蘇には蒙大統領に「本気で信じるのか?」とだけ言ってその場を甄平に支えられながら離れた。
皇兄 你消消气 消消气
懸鏡司の封鎖と夏江の投獄の知らせを聞いて焦っていた誉王。皇帝に呼び出されて御前にやって来た際に、全くの別件だったにもかかわらず「懸鏡司の件は何も存じません」(大嘘)などと言って墓穴を掘ってしまう。
誉王が呼び出されたのは、蔡荃と沈追(靖王と近しい官僚たち・既出)が第十七集で闇炮坊(非合法爆竹工場)の爆発について、別の事案の犯人が減刑を求めて誉王妃の弟・朱樾がその爆発に関与していた事を白状したからだった。
しらを切る誉王がいずれにも関与していると確信して皇帝が誉王り怒鳴りつけると紀王が宥めた。
▼皇兄 (huángxiōng)
皇帝である兄に対する尊称。
強いて日本語で言うなら「兄宮様」「兄上」とかだろうか。
▼你消消气 消消气(nǐ xiāoxiao qì xiāoxiao qì)
文頭に二人称「你」がある命令文。「消气」で「怒りが和らぐ」「腹の虫がおさまる」という意味で、動詞の部分が「消」なので、「消消气」と動詞を重ねることで「ちょっと~する」というニュアンスが加わる。命令文だがこのニュアンスがあるので依頼や提案の雰囲気になっている。
全体で「兄上、ちょっと怒りを和らげて、和らげて」という感じだろうか。字幕では公的な場における弟からの提案の言葉になっている。
それでも怒りを爆発させた皇帝は、手元の物を投げつけて誉王の額から流血させてしまう。涙ながらに不敬の念など抱いたことがないと訴える誉王にほだされて、皇帝は蔡荃が求める公正な措置ではなく、誉王に累が及ばない方法での決着を指示した。皇帝の怒りのポイントは、何より「自身が軽んじられている」ことなのだ。爆発で死傷した何の罪もない民の事は眼中にない。
梅長蘇は屋敷に戻ってから吐血しながら衛崢と薬王谷の人々、靖王、夏冬らのことを気にしていたのに・・・ちなみに奪還された衛崢は霓凰郡主の穆王府でかくまわれている。
🖌今回の気になる単語帳
孀居 shuāngjū
「後家を立てる(再婚せず未亡人のままでいる)」と言う意味。紀王が夏冬のために寛大な処分を皇帝に頼む時の言葉に出てきた。字幕「夫の死が無念ゆえ激情に駆られたのでしょう」の中にまとめられて訳出されてはいなかったが、夫の聶将軍が亡くなってずっと一人で、という状況の説明に使われていた。
平身 píngshēn
ひざまずいて礼をして立ち上がることを表す。字幕は「頭を上げよ」となっていた。蔡荃と沈追が闇炮坊のことで報告のため謁見する際、最初に皇帝にあいさつした後に皇帝が言った。第三十七集①で紹介した表現以外のバリエーションがあるようだ。