ドラマ『琅琊榜』で学びたかった中国語~第三十八集②
梅長蘇と夏江の「対峙」の場面が続く。解毒薬を飲まなければ飲んで7日後に発作を起こして死ぬ毒薬の烏金丸(うきんがん)を梅長蘇が飲まされかけているところから。
很多事情我可以不问 但今天的事 我不得不问
梅長蘇は夏江がここまでして靖王を陥れようとした理由について、「祁王を恐れたように靖王を恐れたからだ」と指摘する。これを聞いて夏江の顔色が変わる。
祁王は夏江が率いる懸鏡司という機関を不要と考えていた。現在の皇帝が在位している間は、自分の地位や権力は安泰だが、祁王が即位してしまうとそれらを失ってしまうことを恐れ、赤焔事案を起こしたことを梅長蘇は指摘した(そしてここに滑族の璇璣公主も関与している)。
この指摘に焦った夏江は無理やり烏金丸を梅長蘇に飲ませてしまった。梅長蘇を脅威と判断した夏江が殺意を口にしたところ、夏冬がその場に来ていて話を聞かれていた。
▼很多事情我可以不问
(Hěn duō shìqing wǒ kěyǐ bù wèn)
「很」は「とても」、「多」は「多い」、「事情」は「事柄」の事で、「很多事情」で「(とても)多くの事」になる。「很」は第十五集の時と同様に、形容詞に添えられているだけと考えられる。「我」は一人称、「可以」は条件的に「~できる」という助動詞で、「不问」は動詞「问(問う、質問する、聞く)」を否定しているので「聞かない」になる。
この部分は目的語が前に来ており、「多くの事を私は聞かない(問わない)ことができる」となる。
▼但今天的事我不得不问
(dàn jīntiān de shì wǒ bùdébù wèn)
「但」は「しかし」という接続詞、「今天」が「今日」、「的」は「~の」という連体修飾語で「事」はそのまま「事」なので、「今天的事」は「今日の事」と言う意味になる。「不得不」は「~せざるを得ない」「どうしても~しなければならない」の意味なので、「我不得不问」は「私は聞かざるを得ない」ということになる。
この部分の構成は前半部分同様、目的語が前に来ている。
全体で「多くの事を私は聞かないことができるが、今日の事は私は聞かざるを得ない」となっており、字幕の方が自然な日本語になっている。
第二十三集の時点で夏冬は謝玉の話を聞いて、師匠である夏江が、夏冬の夫も死んだ赤焔事案を起こした張本人の一人と既に知っているが、梅長蘇の審問中に話題が出たこの場で直接聞いたのだった。
弟子の訴えに対し、嘘を答えて黙らせようとする夏江に夏冬は涙し、「最後のお願い」と梅長蘇に解毒薬を渡すよう懇願する。師匠自身が夏冬に教えた懸鏡司の教えに反する行いをこれ以上重ねないよう涙ながらに夏冬は訴えた。
师父教的新东西 春兄是不是已经学会了
夏冬の兄弟子たちである夏春と夏秋がやって来た。夏江は夏冬を部屋に閉じ込め厳重に見張るよう二人に命じた。夏春はすぐに応じたが、夏秋はなぜそうしなければいけないのか分からず理由を師匠に問うが、夏江は説明する必要はないと言うのみ。
納得のいかない夏秋に夏冬が「新しい教えを受けたが自分には無理だったからだ」と言った。そしてもう一人の兄弟子に言った。
▼师父教的新东西(Shīfu jiào de xīn dōngxi)
「师父」は「師匠」、「教」は「教える」、直後に連体修飾語「的」があり、「新」は「新しい」、「东西」は知識や事柄など無形のものをここでは指している。この部分は「師匠が教える新しい内容(知識・事柄)」という事になる。
▼春兄是不是已经学会了
(Chūnxiōng shì bu shì yǐjīng xuéhuìle)
「春兄」は夏冬から兄弟子である夏春への呼び名で、「是不是」はおそらく自分の推測を確認する語気で反復疑問文にしつつ反語表現による強調のニュアンスになっていると思われる。確認されている内容はその後の「已经(すでに)」、「学会(マスターする、身につける)」、そしておそらく動作の完成・実現を表す動態助詞「了」で構成されている。
この文も目的語が文頭に来ており、全体で「師匠が教える新しい内容を春兄はすでに身につけたんじゃないのですか。」となる。字幕の方がさらっと皮肉めいてスマートな表現に思われる。
この後夏冬は皇帝の命で参内することになった。衛崢が強奪された日に紀王が、夏冬が衛崢を護送していたのを見ていた件で、皇帝が直接夏冬に審問するためである。
🖌今回の気になる単語帳
千真万确 qiān zhēn wàn què
強調するのに用いる表現で「千~万~」というのがあり、「真确(確かである、真実である)」の2文字それぞれの前に「千」と「万」を置いて強調している。これで「きわめて確実である」という意味になる。夏冬が護送していた男が衛崢に違いないと言豫津が紀王に伝えた時に出て来た。
夏江が「衛崢を強奪したのは靖王」と訴えたことで靖王は禁足になっているのに、その衛崢を護送していたのが懸鏡司の夏冬なのはおかしい。それに気付いた言豫津が紀王に相談して、紀王が皇帝に伝えに行かせるというのが衛崢奪還作戦の一環で行われた筋書きである。「言侯府は関わるな」と気遣って一人で参内する紀王さまが素敵。