入門セミナーでいただいた、紹興酒に対するギモンに詳しく回答します。
干杯!中国酒探究家のdonです。
5月11日〜12日に日本橋のコレド室町テラスにて「紹興酒の楽しみ方入門&利き酒チャレンジ」を開催しました。
当日は紹興酒が好きな一般の方から、僕と同じように中華レストランに勤務する方、紹興酒の輸入会社さんなど同業の方々にも多くご参加いただきました。
同じ日にはTokyo Bar Showや中華の大イベント四川フェスも開催されており、ハシゴする強者も。ありがとうございました!
というわけで、この2日間の簡単な振り返りと、みなさんからいくつか紹興酒に関する質問をいただいたので、こちらにも記録しておこうと思います。
僕はその場で話すアドリブ力、対応力が弱いので(苦笑)テキストとして加筆しながらまとめますね。
質問の内容は↓目次を見ていただければ一目瞭然ですので、気になる内容があったら覗いてみてください!
紹興酒セミナー、写真と共に振り返ります。
改めて紹介しますと、今回のセミナーでは前半で5種の紹興酒を飲みくらべしていただきながら、基礎知識や楽しみ方を解説し、後半ではその5種で利き酒にチャレンジ!3種以上正解すると紹興酒をプレゼント!という企画でした。
僕は13時〜18時ぐらいまでずっと喋りっぱなしだったので写真があまりないのですが・・・一部当日の模様を掲載します。
前半の入門セミナーは20〜30分程度にしようと思っていたのですが僕がいろいろと話しすぎてしまって1時間弱と予定より大幅にオーバーしてしまいました・・・これは反省。もっと端的に重要なことを話せる技術を身につけなければなりません。
でも、ご質問もたくさんいただいたりして少人数ならではの対話形式でできたのは良かったかなと思います(前向き
利き酒チャレンジは、失礼かもしれませんが意外な結果となりました。なんとなんと全問正解者が2日間で5人も!3問以上の正解者は合計で半数ぐらいいたんじゃないかなと思います。
紹興酒の利き酒ってあまりやられたことがないので、「なるべく簡単にしよう」と思っていたのですが・・・正直、想定外でした。スゴイ!紹興酒の利き酒、結構難しいんですよ。
でも、次回はもう少しハードルをあげようと思います(笑)
さてさて、では当日ご参加の皆さんからいただいた質問への回答をまとめていきます。紹興酒の意外な事実が明らかに!?
Q1.甕を使う理由は?
甕は微細な孔があり、微量ながらも外気と触れ合うことができます。それによって独自の発酵・熟成が進み、紹興酒特有の風味を生み出すのです。
Q2.甕とタンクで作る紹興酒の違いとは?
甕での醸造・熟成が紹興酒引いては黄酒の伝統的な製法です。ただ、近年は近代化も進んできて、日本酒のようにタンクを用いて醸造する酒蔵も大手を中心に増えてきました。
ただ、現状では、タンクの紹興酒がA、甕の紹興酒がBなどと区分けして販売はされていません。タンクが使用され始めたのもまだここ数年のことで、味の違いを比較できるのも今後の話になってくると思います。
僕自身もそれぞれの飲みくらべをしたことがないので答えることはできません。でも、今後それができたらまた黄酒の面白さが広がるなと思っています!楽しみですね!
Q3.いろいろな紹興酒が楽しめるお店を教えてください!
黄酒のラインナップが充実しているレストランは以下の通りです。
・大天門浜松町店(東京・浜松町)
・テクストゥーラ(東京・日比谷)
・豊栄(東京・本駒込)
・智林(東京・神楽坂)
・東京チャイニーズ 一凛(東京・新富町)
・香噴噴(東京・木場)
・蓮香(東京・白金高輪)
中華以外でも黄酒が楽しめるお店さんもあります。
・SUGAR Sake&Coffee(東京・阿佐ヶ谷)
東京以外にもありますよ。
・酒鬼(新潟・長岡)
・桜梅桃李(静岡・静岡)
・福星(兵庫・神戸)
・一盘菜 田中(京都・元田中)
・深夜的中华食堂(広島・銀山町)
などなど。
手前味噌ですが・・・僕が働いていた黒猫夜(赤坂・六本木・銀座)は中国酒が豊富で、飲みくらべできます。今在籍するMatsushima(代々木上原)ではコース料理に合わせたペアリングも可能なので、ご興味あればぜひ◎
▼都内のレストランはこちらにまとめているのでご参考ください!
Q4.現地の若い人たちも紹興酒を楽しんでいる?
紹興酒は日本でよく知られている中国酒ですが、実は中国全土で親しまれているかというと、そんなことはありません。
紹興酒は紹興市で作られるイチ地方の地酒で、認知度は高いものの主に紹興や上海エリアなど江南から南方周辺で親しまれています。
会にご参加された方は、上海の友人がいらっしゃって「上海でも飲まれてないって言ってた」というご報告もありました。
僕が知る限り、上海ではまだ飲まれている方だと思います。他の地域に行くとレストランのメニューにすら並んでいないこともあります。上海には紹興酒だけでなく「石庫門」という黄酒業界の中でも大きな酒蔵があったり、黄酒ペアリングの会を開催するホテルもあったりします。
そして紹興酒は中国を代表する醸造酒であることは間違いありません。
紹興酒メーカーは多くの若い人たちに飲んでもらうべく、低アルコールの紹興酒を開発したり、スパークリングの紹興酒を販売したりとさまざまな工夫を行っています。今、紹興酒業界はいろいろな面で革命が起きています。今後どんどん変わっていくことでしょう。
Q5.現地の人たちはどのような紹興酒の味を好んでいる?
正直、一般的にはそれほど銘柄を意識して飲んでいないのかなと思います。レストランメニューにある大手紹興酒酒蔵のメニューを選ぶのかなと。というのも、日本酒やワインのように紹興酒を銘柄で選ぶ中国人に会ったことがありません。
ただ、現地には甕から直詰めする紹興酒もあると聞きます。それは日本で飲むよりも風味豊かで、そういう味が好きな方はいるんだろうなと思います。
あと、最近流通する紹興酒の味は、全体的にライトで軽やかなものが多いような印象です。これは現代人の嗜好に合わせて紹興酒メーカーが狙って作っっているんじゃないかなと。なので、逆算して言えることは、紹興の人たちもスッキリとして軽い味わいを好んでいるのかもしれません。
Q6.酒薬って、使う意味あるんですか?
紹興酒の麹といえば代表的に語られるのは麦曲です。(中国では麹にあたる原料のことを「曲(きょく・チュー)」といいます)
ただ、これだけではないんです。
もう一つ、酒薬(しゅやく)という原料があります。これも紹興酒に用いる麹のひとつで、酒母を作るときに使われます。
酒薬は「紹興酒の骨」と言われるぐらい、重要なものとして使われてきました。米と川辺に生えているヤナギタデを粉末にし、水で固めて発酵させます。
原料を糖化するだけでなく、酵母菌も繁殖するのでアルコール発酵にも寄与するマルチプレイヤーです。
これまでは伝統的な製法として酒薬を用いてきましたが、化学的にどのような役割があるのかは解明されていません。
今後、紹興酒の化学的な研究をするための組織も立ち上げられていますし、本当の役割が明らかになっていくでしょう。
ちなみにこれらの麦曲や酒薬の写真って、これまで日本で入手できませんでした。僕は黄酒入門の執筆にあたり、仲良くさせていただいている紹興国稀醸造酒有限公司さんからご提供いただくことができました。多谢!
▼紹興酒の原料についてはこちらに詳しくまとめています。ご参考ください
Q7.「ホアンチュウ」「ファンジョウ」どれが正しい?
僕は日頃からファンジョウと読んでいますが、実際はどうなのでしょうか。
結局、これって中国語を日本語で読むときにどう読むか、なんですよね。
黄酒のピンインは「huáng jiŭ」です。
「huáng」は、ホアン・ファン・フアン、どれでもいいのではないでしょうか?
「jiŭ」は、ジウ・ジュウ・ジョウ、あたりでしょうか。
そもそも不思議なのは、日本では中国語の「酒」をチュウと読みますよね。「白」をパイといったり。白酒は「パイチュウ」と言う方が多いです。言いやすいからかな?僕もたまにファンチュウといってしまうときがありますが。
厳密には、白のピンインはbái=バイです。だから本来白酒は「バイジュウ・バイジョウ」だし、ドラゴンボールの強敵(初期)だった桃白白はタオパイパイでなく、タオバイバイが正しいと思います笑
(今とてもびっくりしたのですがタオパイパイって変換できるんですね!)
僕が働いていた黒猫夜では「ファンジョウ」とメニューに書いています。中国語に厳密に近づけるなら「ホァンジウ」が一番近いような?でもこれを日本語で書くと読みづらいですよね(笑)
なので、僕はファンジョウと呼んでいます。今後もメディアさんによって変わったりしそうですが、ファンジョウと読み続けていきたいと思います(笑)
Q8.donさんはなぜ"紹興酒"を選んだのですか?
そこに紹興酒があったから(遠い目
・・・
最近、僕自身もっと中国酒に対して向き合いたいけど難しい現状もあって、思い悩んでいました。
でも、2日間という短い間でしたが紹興酒に興味を持つ皆さんと出会えたり、会が終わったあとも参加者の皆さんが紹興酒をゆっくり飲みながら談笑する場の中にいたり、専門店で頑張るスタッフさんたちと一緒に働いたりして、どこか吹っ切れたものがあります。
とにかく、自分の目標に向かって歩んでいきたいと思います。
ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました!
▼次回イベントは6月1日(土)です!