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醉游黄乡②黄酒フェスで未知なる中国地酒と邂逅!そして干杯合戦にもまれた夜。

干杯!黄酒入門著者のdonです。

2024中国旅記録、第二弾!

前回は紹興に到着してお腹を満たし、今旅目的のひとつである"黄酒節"へいざ向かいました。

▼前回

黄酒節ってなに?という方は次項で紹介しておりますのでご参考ください。

結論。行ってみて思ったことは、黄酒入門を著した身ではありますが、まだまだ見知らぬ酒の世界が広がっているなぁと改めて痛感した次第です。ワクワクしかない!

「そもそも黄酒ってなに?どんなお酒?」と疑問に思われる方はこちらにまとめておりますのでご参考ください。

では、現地の旅レポートをまとめます。

「黄酒節」とは?中国地酒が紹興に結集!

毎年11月の初旬、立冬の日に合わせて開催される黄酒の大きな展示会です。中国全国各地の黄酒メーカーが紹興に集まるのです。

日本では黄酒の銘柄自体が少ないので、こういう展示会は開催されません。新たな黄酒に出会うためには、現地に行くしかないのです!

コロナ前の2019年にも一度訪問しました。

今年は例年以上に盛大に開催されると聞いて「絶対行きたい!」と思ったことが、今旅を計画するきっかけにもなりました。

黄酒節が開催されたのは「黄酒小鎮」

今回は黄酒小鎮という場所で開催されました。黄酒小鎮は浙江省紹興市柯橋区に位置し、黄酒文化をテーマにした特色ある小鎮です。

歴史的建築や黄酒博物館、作坊を通じて黄酒の歴史と伝統を体験でき、文化イベントもよく開催されています。

というわけで、現地に到着!

大きな門がお出迎え!
小鎮の中にも河が流れ、多くの甕たちが佇んでいます。
食事ができるお店もいくつかありました。
場所はコチラ!引用:Google Map

いざ黄酒節2024へ!

案内板を頼りに歩き回りました。

入り組んだ路地を歩いて奥へ。この施設の全貌がどんなところなのかよく掴めないまま、恐る恐る進んでいくと・・・あった!発見!

きたーーー!

煌びやかな入り口をくぐって入ってみると、細い道が続いていました。どんな造りなのか、全貌が未だによくわからない・・・。

ワインタウンって何かいいですね。

ようやく展示ブースらしきあたりに出ました。

レッドカーペット!

とりあえずおもむろに左手にあった建物に入ると・・・

おお!黄酒たちがーーーーーーーー!!!!!!

10社ほどの黄酒メーカーが集っていました

と、興奮したものの、正直いうと、ちょっと拍子抜け。

「ん?これだけ・・・?」と。

前回2019年に来たときは会場がだだっ広くて、全部回りきれないほどの規模でした。

そのときと比べたら数十分の1ぐらいの規模感。

いや、これで終わりなわけないよな・・・と思いつつ、とりあえず、端から全てのブースを見て回りました。

最近こういう形の黄酒が多いですね。ウイスキー意識かなと。
試飲しなきゃ何もわかりません。
積極的なメーカーさんはお酒がどんどん出てきます笑
素敵なボトル。

日本人客が珍しいようで、各ブースで手厚くご対応いただきました。試飲も沢山させていただきました。

一緒に回った方は「ちょっと試飲は控えておこうかな」というほど、飲みました笑

最初の建物を出てみて周りを見渡すと、同じような建物がいくつか目に飛び込んできました。

「やっぱり他にもあったのか!」と喜んだのも束の間。

他にもあったのか!どころではありませんでした・・・

道は奥へと繋がっており、その先にもブースがあったのです!しかもかなりの数!

出店まで出ていてまさにお祭り!

最初の建物でたっぷり試飲しすぎた僕たちは、焦って急ぎ足で全体を回りました(苦笑

陽も傾いてお店も閉まり始め。
品鉴师は日本でいう唎酒師のような資格。
誰もいないブースもあったけど、歩いているだけで楽しい!
いろいろな建物の中に全国各地の黄酒メーカーが出展していました。

注目したい4つの黄酒

今回も福建省、広東省、山東省、河南省、陝西省、浙江省・・・中国各地の黄酒メーカーが集まっていました。

拙著「黄酒入門」にも掲載した黄酒とも出会うことができました。

黄酒入門には最初、日本で購入できる銘柄のみを掲載することになっていました。ただ、それだと紹興酒に偏ってしまって「紹興酒入門」になる。

僕は黄酒の奥深い世界に興味を持ってほしかったので、たとえ日本で入手できなくても中国で流通する黄酒を紹介するパートも必要では、と提案しました。「中国にこんな沢山の銘柄があるんだ!」と知ってもらえば黄酒への好奇心が湧くんじゃないかなと。

結果的に受け入れていただき、内容が変更になり、現行の形で出版することになりました。

本の執筆当時はコロナで中国に行くことができなかったので、日本で黄酒銘柄を調べて、特に気になる銘柄をピックアップして掲載しています。

自分で言ったものの情報が少なく、かなり大変でした・・・

だからこそこうして出会えたことがとても嬉しかった!

どんな黄酒があったかというと・・・次項で特に印象に残った黄酒を紹介しますね。

房县黄酒 | Fang Xian

房县黄酒(fang xian huang jiu)は湖北省の北西にある十堰(shi yan)市の銘酒で、紹興酒同様に地理的表示制度(GI)で地域の特産物として認定されています。

中でも写真の「庐陵王(lu ling wang)」は房县黄酒の中でも代表的な銘柄として知られています。黄酒入門にも掲載しました。

特徴は上質な糯米を小曲(米麹)で醸す点。米麹といえば日本酒と同じですね!試飲させていただきましたが、味わいも米由来の優しい甘味があって、リンゴのような果実味も感じられます。うまい!

日本酒好きな方は紹興酒よりこちらの方が親しみが湧くかもしれません。

色味もクリア。

宋派 | Zong Pai

ボトルのイラストやフォントが目を引きます。

宋派(zong pai)は河南省にて2019年に設立されたばかりの新鋭酒蔵。齢90を越える酒造りの名士を筆頭に専門家が集って伝統技術を継承。上質な黄小米(粟)を原料とし、こちらも酒曲(米)を使用。黄酒入門掲載。

ボトルデザインが現代的ながら随所に古風な中国らしさも織り交ぜてお洒落。HPもしっかり作り込まれていてブランディングにもしっかり注力しているのがよくわかります。

黄酒はHPのない酒蔵の方が多いんです。Wechatのアカウントで済ませる傾向があります。

箱もかっこいいのでプレゼントにもいいですね!

小米は黍とも訳されることがあるのでどちらか見極めが難しいのですが、見た感じ粒が小さいので粟かなぁと。

河南省の文化遺産にも認定されている醸造技術。
度数は13度と優しめ。
いい色!

味はラベルに「清爽型黄酒」とあるように口当たりが優しくて飲みやすい!冷やしたら尚イケそう!黒米の方も飲ませてもらいましたが◎でした。ぜひ日本に入ってきてほしい!

黄関 | Huang Guang

こちらも黄酒入門に掲載。直接出会えて嬉しい!

昨年日本に入ってきた陝西省漢中市の黄酒ブランド「黄関(huang guang)」。

産地周辺は自然豊かで天然の朱鷺(トキ)が住んでいるほど。ちなみにトキは日本では絶滅した鳥ですが、新潟県と陝西省が友好都市となり、つがいのトキを贈呈されました。それから繁殖に成功しています。

黄関はその恵まれた気候の中、野外に甕を置き、約半年に渡って露天発酵させていくのが特徴です。これは鹿児島で約200年以上前から伝わる「福山黒酢」と似た製法です。

ボトルデザインもいい感じ!

原料にもこだわり、米の名産地として知られる黒龍江省の"五常糯米"を使用。糖分を豊富に含み、かつ露天醸造によってメイラード反応は活発化します。色味はしっかりと濃くなり、味も濃醇な仕上がりに。

桑の実や梅を漬けた黄酒。
優しく丁寧にご案内いただきました!

実はコロナ前に参加した黄酒節で出会っていて。繋がりたいなぁと思っていた酒蔵さんでした。

今回改めて会うことができ、その後社長さんが来日されました。

東京でお会いして「現場を見学させてほしい」とお願いしたところ、快くOKをいただきました!

今年は陝西省に行きたいなと。初の場所なので、今からとても楽しみです。中国旅を実現するため、頑張って働きます笑

紅曲黄酒

紅曲酒は、紅麹を使用した黄酒の総称です。

紅曲は紅麹です。日本ではとある事件を境に紅麹の印象が悪化してしまいましたが(あれ、紅麹は無罪です)一部の黄酒は紅曲を使用します。

広東や福建省、浙江省南部などでよく用いられます。ただ、南方だけと限定されているわけではなく、他地方でも時折見かけるのでこれも今後の情報次第で変わってくる常識かなと。

黄酒で一般的に使われる麹は麦曲で、餅麹といって煉瓦状に形成して発酵させていきますが、紅曲は日本酒の麹と同じ、散麹(ばらこうじ)です。米粒ひとつひとつに菌が繁殖していて、パラパラと粒ごとに分離しています。

街の中で購入可能。中国の散麹を初めて直接見ました。

これまで中国酒=紹興酒、という印象が日本には根強くありました。というか今もそう思われている方がほとんどなんじゃないかなと。なので、中国酒の情報は、紹興酒についての情報をベースにして語られることが多いです。

紹興酒で使われる麹は麦曲なので餅麹。なので中国酒は餅麹で作られる、みたいに言われてきました。発信側もそういう認識だったんじゃないかなと。

でも、地方や酒蔵によっては散麹で作られていることがわかりました。

こちらが中国の麦曲(餅麹)※写真提供:紹興国稀酿造有限公司

こうして黄酒についてどんどん情報が集まっていくと、これまでの常識がどんどん覆っていきます。

やっぱり現地でリアルな情報を得ていくことは大切だなと改めて思います。

今後、中国各地の黄酒について知っていくことで、中国酒文化はもちろん、"米の酒"の世界はさらに広がっていくことでしょう。ワクワクしませんか!

道端をトコトコ歩く、犬氏。
夕暮れはちょっと涼しいですが、気持ちいい。

こうして時間みっちりまで観て回った黄酒節。行けてよかったなと率直に思います。今後も毎年チェックします。

その後、夜。紹興酒メーカー最大手の古越龍山が主催の黄酒節打ち上げ的なパーティに参加しました。

紹興酒の大宴会!中国干杯文化にまみれてワイワイ!

紹興の大きなホテルで開催されたパーティ。

参加者総勢360人という大宴会!

日本でも流通している国酿(20年物)が飲み放題という豪華な会!

これはもう中国らしい宴会でした。

気づいたらいつの間にか各卓で干杯合戦スタート!お偉いさんが話しているときも関係なし。ほとんど聞いていません笑(いや、飲みながら聞いているかも!?

黄酒界の重鎮らしき方々が前方に座っていらっしゃる。
黍のスープ。
ちょっと、記憶が・・・。
古越龍山 国酿20年。グラスが小さくて助かりました笑

盛り上がってくると、事あるごとに干杯!

古越龍山の会長さん、副会長さんとも干杯!

誰かわからないけどとにかく干杯!

飲んだあとは空になった杯を相手に見せるところまでが礼儀です。しっかり飲み干しましたよ、と。

コロナ前に干杯を禁止するような風潮があったように思ったのですが、この習慣は健在でしたね!

でも意外とそんなに酔っ払うことはありませんでした。むしろもうちょっと飲みたくて、宿泊するホテルの近くを散策。

魯迅故里付近。夜もまだ人はちらほら歩いてます。
ホテル前にある酒屋さんもぶらり。自家醸造酒はナシ。

もう夜だったので、閉店してしまうお店が多い中、ギリギリ入れたお店でビールを1杯!干杯!

この辺は雪花が多かったですね。
軽やかでスッキリ!紹興酒のあとのビールもまた最高!

ちなみにこのお店の店主さんもご自宅で酒造りをしているようで、飲ませてもらいました。写真を撮り忘れてしまったのですが、すっきりと爽やかな甘みがあって、美味しかった!

初日、終了〜〜〜

というわけで、2024中国酒旅の初日は非常に充実した1日となりました。

2日目は紹興北部に赴いて、紹興酒蔵の見学をしたのですが、そのときの模様は中華メディア80Cさんに寄稿させていただきました。珍しい黄酒のボトラーズ会社を訪問しました。ご覧いただけたら嬉しいです!

次回は、紹興3日目。300年以上の歴史を誇る紹興酒蔵の訪問記をまとめます。それではまた!下次见!

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Don | 中国酒探究家
主に中国酒にまつわる活動に充てさせていただきます。具体的には中国酒関連のイベント開催費や中国酒の研究費、現地への旅費、YouTubeの制作費用などです。お力添えを頂けたら嬉しいです!干杯!