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ターナーと空の色 Turner in January

冬は冬でも、11月〜12月よりも1月〜2月の方が好き。スコットランドの短い日照時間にほとほと嫌気がさしてくる年末を何とか乗り切って、夜明けが骨に染みてくる1月。

2年のエディンバラ滞在を経て、日本に帰国することになったぐーちゃんのnoteを眺めていて発見した1月のターナー(Turner in January)。ぐーちゃんは昨年の1月に見に行かれているけれど、知らなかった、調べたら今年もやってるというのです。

先週見に行ったら長い行列で諦めて、本日、再挑戦。それでも45分待ちでしたが、「美術館でこんなに待ったことないと思うな」という私に、「モナリザの時があったじゃないか」と夫、そうそう、ルーブルのモナリザは確かにこんなもんじゃなかった . . . 。

小さな部屋に結構ぎゅうぎゅう。

ターナー Willam Turner (1775-1851)は、英国誇る、英国の最も有名と言ってもいい画家です。ロンドンのCovent Garden生まれ。15歳の時に、すでにロイヤルアカデミー会員。そこから60年以上、主に英国内だけでなく、ヨーロッパなどの風景画を描き続けました。

Henry Vaughan (1809-1899)はやはり英国生まれのアートコレクター。彼のお気に入りがターナーで、200点以上収集していたのだそうです。Wikiによれば1840年ごろ、二人は実際に会ったこともあるのだとか。この彼の大事なコレクションは遺言で、

31点の水彩画はNational Gallery of Ireland
38点の水彩画はNational Gallery of Scotland

に寄贈され、一年のうちの1月の1ヶ月の間だけ、無料で、一般公開しても良いという条件付きだったのだそうです。1月に限ったのは、太陽の光で水彩画が色褪せてしまうことがないように、との理由から。

今年はターナー生誕250周年を記念して、初めて、このアイルランドの31点とスコットランドの38点がお互いを交換しあって一般公開になっている特別展。一生に一回かもしれない機会ということで、なるほど、それでこんなに混んでいるわけだ。

ということで、今日見ているのは、昨年ぐーちゃんが見たスコットランド所有の38点ではなくアイルランドからわざわざやってきた31点ということになります。来年はスコットランドのものを見に来いということなんですね。

会場はターナーの水彩画が時系列で、反時計回りに見ていく仕組みになっています。

19際の時の水彩画 Cantabury Kent
19歳にして完成度がすごい
でもいわゆるターナーの典型的な雰囲気はまだ出てきていない頃
小さい絵なのですが、細かい


会場の真ん中くらいに差し掛かると、いきなり、絵の雰囲気や色の具合が変わるのに気づきます。

きゃあ、エディンバラのArthur's seat

あのターナーの、典型的な絶妙なグラデーションのような色合いが現れてくるのです。

試験的に、青い紙の上に描かれているものとか
若かりし頃の細かさが消え、大きな筆使いになってきている
(写真が歪んで撮影されていてすみません)


ターナーはロマン主義というカテゴリーになっていますが、印象派の先駆けとも呼ばれています。 例えば、印象派を代表する画家、クロード・モネに大きな影響を与えのだそうです。ターナーは、光と色彩で自然を表現しようとし、「ひとつの印象を呼び起こすことが肝心なのです」という言葉を残しているのだそうです。これは、印象派が誕生する約30~40年前の先駆け的発言でなのですね。

そういえば、我々みんな大好き、モネについてつい最近、Junkoさんのところで拝見したばかりじゃあないですか!


最後の方はイタリアのヴェネチアやドイツの風景画だったのですが、写真では伝えきれない色の美しさ。

わあああ、綺麗だ . . . 


Henry Vaughan が遺言で、一般公開を1月に限ったのは、太陽の光で水彩画が色褪せてしまうことがないように、との理由からと説明がありましたが、多分、それだけではないように思いました。薄暗い真冬のスコットランドの昼間にNational Galleryを訪ねてきた我々の目に、ターナーの淡い色の水彩画がより美しく見えるのは間違いない。外はどんよりとした灰色の空の中、淡いオレンジやほのかなピンク色が何とも強烈な印象を与えるのは間違いない。Turner in Januaryー素敵なコンセプトですよね。さすがだ。

絵を見終わって、外に出るとそう、この空の色。

National Gallery of Scotlandのすぐ外で
夕方4時
エディンバラにはどんよりの灰色の空が似合う

ターナーの空の色は「斜めの太陽」の光の色。赤道直下の燦燦と降り注ぐ強烈な直角の太陽の光で見る鮮やかな赤や黄や緑ではなく、雲に反射している低い弱々しい太陽、まさに北国で島国のイギリスの風景が彼のパレットだと思います。時々、出勤途中の朝早くとか夕刻どきに、うっとりとするような美しい朝焼けや夕焼けに出会うことがあります。その何色も混ざったグラデーションは、1分ごとに色を変え、カメラで写真をと思い立った頃には、あっという間に色が褪せてしまっている。

夕方4時半


いつまで見ても見飽きないけれども、あっという間に消えてしまう色たち。すぐにでも色褪せてしまいそうな儚さを秘めているほんの瞬間の自然の美しさのような水彩画でした。

ぐーちゃん、ご紹介ありがとうございました。ふふふ、それでね、今度ぐーちゃんのご帰国の際のキッチン用品を譲っていただくことになりまして、ついでと言っては何ですが、うちでランチにお誘いしております。noteで出会った方々に実際お会いするのはこれが初めて。#noteやっていてよかった。


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山林
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