昆虫と一期一会のはなし
[1]
クレイグが
「Are you ready?」
と珍しく興奮気味だったので、何かと思い彼の虫取り網の中をのぞくと
あーーーーーーーなにこれ?
思わず後ろにのけぞってしまいました。
皆様も閲覧注意です。
この黄色い卵のような背中に怪しい模様、そして目のような黒い2点のポチポチ。まるで北京オペラの仮面のようです。黄色は中国の皇帝の着るインペリアルカラー色。しかも堂々とでかい。
後で調べてみると、キバナオニグモ Araneus marmoreus というそうで、本州では稀。へ〜い、本州に住む皆さんはほぼ見たことないはずだ。
模様も個体ごとに微妙に違うそうで、確かにgoogle imageでは黒っぽいものが多いみたい。うちのキバナオニグモ、もしかして美人さんでは?
[2]
私のエディンバラの白い車は、鳥アタックに出会うことが多くて、他の車が綺麗なのに私の車だけフンだらけだったりすることがあるのですが、兄から借りているシルバーの車は結構虫に人気があります。
こんにちは〜
[3]
蝶々も数おおく見ましたが、この蝶は調査中に一回見ただけ。ヒラヒラと目の前を飛んでいくその場面をなんとか携帯をポケットから取り出して撮影したものの、ブレブレ。
ひらりひらりと飛んでいるところを一回見ただけだからなのか、世にも美しいものとして記憶に残っていくのです。後で聞くと、キベリタテハ 黄縁立羽 Nymphalis antiopa という名前らしく、クリーム色の縁取りのあるビロードのマントのような組み合わせで、英語だとMourning cloak(喪服)と呼ばれているのも頷けます。
しかし、綺麗だったなあ . . .
[4]
初日に1度見たきりで、逃してしまった小さな白い蛾のような虫にどうしてももう一度出会いたいクレイグ。
クレイグはど根性で、初日に出会った場所にもう一度行って探すのだというので、付き合ってカメラを抱えてついて行きました。
一期一会と書きましたが、もしかして、本当にもう一度見ることはないのではないか? ちょっとドキドキしながら後を追いましたが、なんと、嬉しいことに、
いたーーーーーーーーー!
いました。
面白いことに、山林内、ほぼ同じ場所でコイツに出会うことができました。同じ場所といっても、南斜面、私の目から見てもこれといって特徴のある植生というわけでもなく、クマイササの茂る斜面なんですけどね、コイツのお気に入りの場所であるのでしょう。
私も大事に何枚も写真を撮らせてもらいました。
宿に戻り早速、教えてくれるには、
Epotiocerus Flexuosus アカフハネナガウンカ
という名前らしくて、蛾ではなく、plant-hopperの仲間らしいです。日本には実にウンカの仲間に100種以上いて、イネにつくウンカは害虫として認識されているらしいですが、このアカフハネナガウンカはなんとも愛らしい。
クレイグに一度見たきりで2度と出会えていない虫ってたくさんいるの?と聞いてみると、いるいる、まるで悪夢に取り憑かれているかのように、あれは夢だったのか、もう2度と見ることはないのだろうか、と悶々とするようなことがたくさんあるのだそうです。しかも写真として証拠に残っている場合ならまだしも、写真にもない、同僚と話しても信じてもらえない、というような伝説のような出来事もあり、それって昆虫学者のあるある話として存在しているようです。
一期一会といえば、とても印象に残るみはらさんの一期一会病の話を思い出します。素敵だ。