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『SOS地底より』と言えばカマドウマ

『SOS地底より(作:伊東信、絵:横山明)』

小学生の時に大好きだった冒険小説。これを読んでカマドウマなる虫に憧れ、リスを飼って口笛であやつりたいと願い、リスはくる病にならないよう日光に当てないといけないと知り、地下壕を見つけたく探したりした笑。

再読したいと長年思いつつも、残念ながら絶版で古本屋でもなかなかお目にかかれずだったけど、図書館で読めると知り早速借りた!

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●登場人物
・桐原 良太:主人公。将来は考古学者になりたい小学生。
・桐原 浩二:良太の弟。虫キチ。カマドウマを見つけたい。
・田村 伸也:相棒はリスのビリーとラック。
・佐々 保津美:かわいくてしっかり者。あだ名はホイサッサ。
・黒岩 五郎:番長。あだ名は番ゴロ。
・李:保津美の叔母(焼肉屋)の夫。歴史研究家。

●あらすじ
父親が借金して夢のマイホームを建てた新興住宅地に引っ越してきた主人公一家。
友人になった伸也にリスのラックを譲ってもらうが、弟の不注意でラックは野良猫にやられてしまう。

猫を懲らしめるべく「ドラギャン作戦」と称して仲間達と猫探しをしていると、偶然地下壕を発見。
そこは麻薬組織のアジトで、良太と伸也が捕まってしまう。
勉強は苦手だけど動物や自然の知識は豊富な伸也の機転で、ビリーの尻尾にSOSの手紙をつけ地下壕から逃がす。
弟がビリーを見つけ、良太と伸也は無事救助、組織も摘発される。

地下壕で見かけた記号のようなものが、以前焼肉屋で見た文字に似てると気になる良太は、後日李と地下壕に行き見てもらう。
それは、戦時中に強制労働させられていた朝鮮人によって刻まれた『ちょうせんじんの、ち、なみだ、いかり、ここにうめる』という意味のハングル文字だった―――。

地下壕の発見により、発展予定だった新興住宅地の地盤不安が問題視され、ザワつく大人たち。
良太の父も「苦労して建てた我が家がほんとに砂上の楼閣だったとは」と悩むが、戦争の遺物と責任について語り、良太は「防空壕をつくらなければならない世の中に再びしてはならない」と思う。

この表紙絵からしてもう懐かしい~~~!
お見舞いに行って出された『いちごにミルクとさとうがどっさりかかった小皿』とか(セレブ感!
合言葉を九九にしたのは実は九九が苦手な伸也の為とか(友情…!
奢ってもらった『チョコぐるみのアイス』とか(当時好きだったうまか棒を想像し読む度食べたくなってた笑
足が折れたカマドウマにセロテープと糸でギプス作ってやるとか(器用!
細かいエピソードもそうだったそうだった笑!ってなって、子供の頃読んだものって本当に色濃く記憶に残っているなあと思った。(今では観たり読んだりしたそばからすぐ忘れる…。


アイス「うまか棒」

麻薬組織「ブラック・キャット」の荒唐無稽さはあるし、ノスタルジー補正もあるかもだが、今読んでも十分面白くてびっくりした。

冒険モノとしての面白さだけでなく、家のローンとか、セールスレディのシンママ家庭とか、後妻である義母とうまくいってない同級生など大人の事情も描かれてたり、対象読者には難しいであろう朝鮮人強制労働者・戦争の哀しみについて過剰な説明を入れることなく書かれているのも、子供向けだからと侮らない作者の真摯さのように思う。そして、エピソードから読み取った"何か"は、今はわからなくても成長につれ理解っていけば良いのだ、という読者への信頼にも感じられ、今でもこの物語が多くの読者達の心に残ってる理由のひとつだろう。今の子供達が読んでもわくわくして楽しめるだろうに、絶版なのが悔やまれる。

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その後、自分はリスも飼わせてもらえず、地下壕も見つけることができなかった笑。
そしてカマドウマについては結局何だかよくわからず。当時はネットもないし図鑑等で調べる程でもなく、自分の日常にカマドウマが登場することもなく、うっすら憧れの昆虫として記憶の奥底に入ったまま幾歳月。

ある日、職場でカブクワや幼少期の虫捕り等の昆虫話で盛り上がってる時に、ふと思い出し「そういえば、子供の頃にカマドウマっていうのに憧…」と言いかけると、食い気味に「ああ、便所コオロギね笑!」と。

べんじょこおろぎ?!?!とショックを受けてる自分以外は、「昔は良く見たなぁ」「めっちゃキモいよね笑」と皆さんご存知の様子。

……カマドウマって便所コオロギなの?!?!

幼少期、コオロギだと思ってたくさん捕まえて、上下に組み合わせた苺パックに入れて机の下に隠して飼ってたけど、何日経っても全然鳴かないのでこっそり父に訊いたらこれは便所コオロギであると教えられ、虫嫌いの母にバレて逃がして来いとめちゃめちゃ怒られた、あの便所コオロギなの?!?!

…とまぁ、憧れてた虫が便所コオロギと知ってガッカリだったけど、勝手に失望されて虫からしたらいい迷惑だし、そもそも「便所」って付けられてるのも可哀想だな…。

#読書感想文
#SOS地底より
#カマドウマ

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