#07 技術・学問の先へ。(『土木のこころ』考察)
こんにちは。今回は、ある本について自分なりに考察していきたいと思います。
今回、紹介する本は『土木のこころ』です。
なるべく、ネタバレにならないように書いていきます。まだ読んだことない人も、土木にあまり詳しくない人も最後まで読んでくださるとありがたいです。 (._.)
1. どんな本?
簡潔に言えば、土木に携わった人々の伝記です。19世紀後半から20世紀にかけて活躍した20人の土木技術者/職人の一生が書かれています。道路・鉄道・橋・トンネル・港湾・河川・砂防等、様々な分野から20人が選出されています。現場の最前線で手を動かした職人やプロジェクト全体を統括した土木技術者等、立場も様々です。
内容についてですが、土木の専門用語についてある程度注釈がついていますので比較的読みやすいと思います。分からない部品、構造物が出てきたときはG○○gle検索しながら読み進めていました。
こんな人におすすめです!
2. 『土木のこころ』とは『どんな困難にも立ち向かえる屈強な心』か。
さて、20人について一人ずつ見ていくとらちが明かないので今回は題名にもなっている『土木のこころ』について考えていきます。
皆さんは『土木のこころ』と聞いてどんなことを連想しますか。私が土木工学を学ぶ前、『どんな困難にも立ち向かえる屈強な心』が土木と向き合う力になっているのかなと思うことがありました。おそらく、昔ながらの厳しい土木現場の環境から生まれたイメージだと思います。『どんな困難にも立ち向かえる屈強な心』も一つの答えだとは思います。しかし、土木に携わる人々全員がその心構えを重要視すべきとは言い辛いと今では考えています。
例えば『土木のこころ』においても工事現場において、自らの命を賭して他の人の命を救うというエピソードがあります。ただ、安全を最重要視するようになった現在においてこのような行動を称賛すべきなのかについては賛否両論になると思います。
(2021年において日本国内で作業員を危険に晒し続ける作業は無いと願いたいですが…)
この他にも20人の言動や価値観について違和感を覚えることや、場合によっては不快に思うこともあるかも知れません。しかし彼らは間違った価値観を持っていたのではなく、与えられた環境の中で一生懸命に生きただけです。価値観が多様化した現在、必ずしも彼らの言動や価値観をそのまま真似する必要はありません。
過去の価値観を押し付けるために本書が存在している訳ではないはずです。
3. 技術・学問の先へ。
では、先人から私達が学ぶことは無いのでしょうか。
20人に共通して言えることがあります。
それは、技術・学問の先のことをずっと考えていたことです。
もっと簡潔に言えば
なぜ、その技術を磨くのですか。
という問いに対して彼らなりの答えを持っていました。
なぜ、その答えが必要なのでしょうか。
孔子の教えが書かれている論語の中に次のようなものがあります。
技術を磨くことは非常に重要ですが、それと同時に磨く理由を考えなければその技術を使いこなせることは出来ません。また、技術を磨かずに考えているだけでは、絵空事しか描くことが出来ません。
彼らは技術が超一流であったのと同時に、私達の想像を大きく超えることを考えていたのです。
彼らは学問・技術の先に何を見ていたのか。それはぜひ、本を読んで確かめてみて下さい。
4. 私の「土木のこころ」
私自身、土木を始めとした学問を磨くことで精一杯ですが学んでいくうちに『技術の先にあるもの』を見つけることが出来ればと思います。『技術の先にあるもの』が見えていれば、たとえ土木以外の道に進んだとしても、未来に向かって歩いていけるはずです。
私が今持っている『土木のこころ』は、
土木について様々な人々と対話することで、新たな知見やアイデアを得る。
ですかね。noteを始め、様々な場所で多くの人々と出会えていること、大変嬉しく思います。ありがとうございます。
ちなみに、この本を復刊した寿建設株式会社の森崎社長は『土木のこころ』について次のように言及しています。
私含め、技術・学問を磨き続けている人々へ改めて問います。
なぜ、その技術を磨くのですか。
5.雑な感想
ここからは雑な感想です。
人に着目した土木の本は中々ないので、新鮮でした。20人のお話が独立しているのではなく、同プロジェクトに対して異なる役割で関わっていたり、ある人の功績が後の世代へ影響を与えていたりして大変面白いなと感じました。読み進めていくうちに、土木史に深みが出てくる感触でした。自分は一人の人生を追う伝記よりもある人の人生がたまたま他の人の人生に影響を与えるみたいな話が好きなのかも知れません。
6.編集後記
佐久間ダムと若戸大橋には行きたくなった。