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祖父母のやさしい料理

祖父は時々、半身麻痺の後遺症が残る重い体を引きずって台所に立ち料理を作る。そんな時は決まって祖母が隣にいる。

豚肉のお汁と特製ダレの焼き鳥、
これが格別に美味しい。

片手を使わずに料理するのはかなり難しい。余程刃が鋭くなければ抑える手無しに切ることはできない。
なので私は手伝おうとするけれど、祖父は「大丈夫だ」と言う。これは祖父なりの気遣いだ。お肉や野菜を切る工程は認知症の祖母に任せている。

これがまた面白く愛おしい話なのだけれど、
祖母の認知症はかなり進んでいて、数分前の会話を覚えていられない。そのため、例えば「お肉をこのサイズで切って欲しい」と見本を置いて切り始めてもらっても、どんどんとサイズが変わっていってしまう。
何に入れるものなのか、なんでこれを切っているのか、分からない、忘れてしまうのでサイズも祖母の思いと共に変化していく。

けれど祖父は祖母に頼む。
17時の夕食のために15時から支度を始める。
祖父と祖母は、よくドラマなどで観るおしとやかな年配夫婦ではないので、お互いに悪口を言い合ったり怒鳴りあったりもするけれど、こういう風に一緒に台所に立つ。

こんな時は祖母が前によくしてくれた話を思い出す。
祖母の祖父母の話。
「祖父母はいつも喧嘩をしていたけれど、何かで避難指示が出た時、二人ともかなり動揺し、まだ小さかった自分(祖母)を忘れ、二人で大慌てで手を繋いで逃げていってしまった。戻って来てくれたけど。」
それもまた今では笑い話だけれど、祖母は相当驚いたのだろう。何度も私に聞かせてくれたのでよく覚えている。

ならぶ祖父母を見ると、なんだか不思議だなぁと思うと同時に、私の中で、夫婦なのだなぁ、と腑に落ちる。

祖父と祖母、二人力を合わせても一品作るのに1時間弱はかかるけれど、私はこれ以上優しい料理にまだ出会っていないなぁと口にするたびに思う。

<豚肉のお汁>
・豚バラのブロック(一口台に薄く切る)
・ネギ
・しらたき
・みりん
・豆腐(絹)
・昆布つゆ
・醤油
・味の素

祖父はお肉が好きで、お汁にも肉をたくさん入れる。甘い油が溶け、ネギのいい香りがして、しらたきには汁が染み絶品。

<特製ダレ>
・ニンニク(すりおろすとより良い)
・みりん
・砂糖
・味噌
・醤油
・昆布つゆ
・はちみつ(少し)

ご飯が進まないはずはなく、つい食べすぎてしまうけれど、祖父はこのタレを毎度必ず鶏肉を使うのでタンパクタンパクと思いながら、なんの罪悪感もなく食べている。バーベキューなど、炭火で食べると更に美味しい。

シンプルだけど我が家で愛されている祖父のレシピ。

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