恋の予感というものは
毎日あんなに暑くて、噴き出す汗と一緒に溶けてしまうんじゃないかと思っていたのに、ある日突然、夜風が秋の訪れを教えてくれた。
もう9月も終わる。
あっという間だ。大人になってから、月日の流れは本当に早い。仕事に没頭しているうちに、冬さえもあっという間に来てしまうだろう。
そんな折、半年前ぐらいに知り合った仕事関係の人に飲みましょうと誘われて、他に誰を誘うでもなく2人で約束をした。
彼とは月に何度か仕事上で会っては業務の話をする間柄。いつも、もう仕事の話題もなくなったな〜失礼しようかしら、と思うのに、なかなかその場から逃してくれない人で、不思議な人だなと思っていた。ちょっと無言の空気があったりして、ん???今何の時間???と思うことが度々あった。
なんかまあその時点で、全く期待してなかったといえば嘘になるんだけど。
仕事上で誰かと何かあるんだとすれば、この人なのかな〜なんて、考えたことはある。
でもいざ飲み始めてみたら、あまりにも仕事の話ばっかりするから、ああ、やっぱそういう感じだよね、おっけー!と思って、表向き仕事モードで接してみた。でも後半はちゃんと砕けた話もできて、相手からは、全然時間足りなかったね、またすぐ飲み行こう、と言ってもらえて、私もなんだかすっかり浮かれてしまった。
LINEでも、あまりにも真っ直ぐに、感情を伝えてくれることに大変戸惑っている。またすぐ飲もう。やっぱり面白い子だった。完全にハマってる。興味しかないよ。次行けそうな日教えて。
でも、元々こういう人かもしれないし。みんなに同じように接するタイプかもしれないし。ただの人たらしパターンの可能性だって捨てきれない。
と、傷つかないように予防線を張るわたし。過去の恋愛で臆病にもなっている。
恋の予感、というものを人生で初めて体感した。
こんなにも突然やってくるものなのか。まるで今年の秋のようだ。
ただわたしももう大人なので、先のこともいろいろ考えることができる。考えざるを得ない。
秋の夜風を浴びながら、その冷たさでまた少し、冷静さを取り戻す自分がいた。