「夕食用の蟹さんにザオリクをかけた兄弟」母への感謝エピソード
一軒家に住んでいた幼少期は、幸せな記憶に包まれている。
父の存命中、母は専業主婦として家にいて僕と兄を育ててくれた。
僕がまた小学生の低学年だった頃、母が夕飯用のカニを買ってきた。カニはかすかに動いている。命が尽きかけている状態だった。
それを見た兄が「食べるのはかわいそうや。海水につけてよみがえらせよう!」と提案した。
母は「これは夕食用やから、今から調理するの!」なんてことは一切口にせず「わかったわ」とにっこり笑って水槽を用意してくれた。
母は僕らが生き物を飼育するのを好意的に見てくれており、命を大切にすることへの学びになると思ったのかもしれない。
ちなみにタイトルのザオリクとは、『ドラゴンクエスト』に出てくる「蘇らせる呪文」のことだ。
塩水に入れられたカニは、確か数日は生き長らえたと思う。
天寿を全うしたカニは、庭に埋葬された。
思えば昆虫や爬虫類などたくさんの生き物の飼育をさせてくれた。
こういった環境が、非常にありがたかった。
おかげで兄も僕も、今でも魚や爬虫類などの生き物を飼育している。
兄の家へ遊びに行くと、所せましと多くの水槽が並べられていて、その世話をせっせと甥っ子がしていた。
ちなみに甥っ子は頭の形が僕とよく似ており、ピッコロ大魔王みたいな長い頭をしている。欧米人に多いとされる長頭型だ。
生き物大好きの小学生の甥っ子を見ていると、まるで幼少期の自分を見ているような不思議な感覚に陥る。