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実話|コンビニ店員の予期せぬ反撃!クレーマー危うし!?
僕がまだ20代前半の頃のフリーター時代。コンビニでバイトをしていた。
そこは大阪の中で「かなり治安が悪い」といわれるところで、駐車場に停めていたお客さんの車が車上荒らしにあい、警察が訪ねてくることもよくあった。
僕は外国人留学生のM君と、一緒に入ることが多かった。
何かと難癖をつけてくる、あるクレーマーの客がいた。顔は浅黒く日焼けしており、ところどころ歯が抜けた、中年男性である。
店長から「色々と嫌なこと言ってくるけど、みんな感情的に反応しないように」とみんな言われていた。
僕も、この客に何度も因縁をつけられたことがあった。
とりわけM君は、クレーマー客からよく嫌事を言われており、ねちねちと責め立てられることが多かった。
ある日の夜、僕とM君が一緒にバイトに入っていると、くだんのクレーマー客が来店。
レジで煙草を買いながら、またねちねちとM君をいびる。
少し離れレジカウンターから僕は、ふたりを見ていた。
M君は、対峙しているクレーマー客と目を合わさないようにしていたが、いつもと様子がおかしい。
クレーマー客は自分の発する言葉に興奮し、人種差別的な発言を口にした。
M君を見ると、レジを打たずに両手の拳をぎゅっと握り耐えている。体が少し震えている。
次の瞬間。
M君の右手が動いた。拳がクレーマー客の鼻づらにめり込む。
店内には他のお客さんもいたが、みな目が点になり「急に何が起こった!?」と、M君を凝視。
クレーマー客は「おい…俺は客やぞ」と、なんとかマウントをとろうとしているが、いつもの勢いがなくその目は完全に怯えていた。鼻から血が垂れている。
M君はレジカウンターのサイドにあるバックヤードへ続くドアの中へ、そそくさ消えていった。
「頭を冷やすために、姿を消したのかな?」と思ったら、彼はすぐにレジカウンターへ戻ってきた。
畳まれたパイプ椅子を両手に持ち、すたすたレジを出てクレーマー客に近く。
M君は、椅子で一撃を加えようとしたが、クレーマー客が身をひねり何とか避けた。
「ひいっ!」と尻餅をついたクレーマー客に向かってM君が、パイプ椅子を振り上げたところで、僕はようやく「何してるねん!」とふたりの間に入った。
激高するM君をなだめるのと、「裁判するからな!」と半泣きになっているクレーマー客との間にはさまれ、おろおろ。
コンビニのすぐ近くに家を借りていた店長も駆けつけ、警察を呼ぶことになり大騒動に発展。
M君が、クレーマー客に謝罪することで彼は逮捕されずに済んだようだ。
ここだけの話だが、クレーマー客に頭を悩ませていた、我々店員側で「ようやってくれた!」と快哉を叫んだ人が少なくない。
その後、クレーマー客は何度か来店したが、前のように店員をいびらなくなった。たばこを買う際に不貞腐れた表情で、いつも千円札をお金を乱暴に放っていた。
いじめが好きな人は「コイツなら、いたぶっても逆らってこない」と品定めした相手を加害する。
しかし被害に遭い続けている人間が、未来永劫反撃しないという保証はどこにもない。
相手が何を考え、どんな武器をもっているかなど、わからない。
他者に敬意を持ち丁寧に接することは、自分の身を守ることにつながるのだ。