男性の後輩に執着された話「世界はあれも愛と呼ぶのか?」
僕自身が愛着の問題を抱えているせいなのか、同じように愛着の傷を持つ人に、激しく執着されることがよくあった。
15年以上前だったと思うが、7歳年下の男性と仲良くなった。
度々飲みに行くようになり、仲良くなった。
最初はコミュニケーション能力の高くて、場を盛り上げるのがうまい人間だと思っていたが、蓋を開けて印象が変わった。
そういった力はシビアな社会で生き抜くために、彼が後天的に身につけたものだとわかったのだ。
とにかく僕への執着が強く、僕を独り占めしたがる。
彼の前で僕が他の人と楽しそうに話していると、嫉妬を隠さない。
じとっとした目で「何を俺以外の人間と楽しそうにしゃべってんねん」と訴えかけてくる。
深夜に長文のLINEを送りつけ、僕への不平不満を伝えることも。
僕は「こいつ、結構しんどいなあ」と感じ始め、次第に距離をとるようになった。
ある日、僕は紹介された仕事をしようと顔合わせのために先方のもとを訪れた際、不意打ちの圧迫面接のようなものを受けて、かなり凹んだことがあった。
圧迫面接の直後、そのことをくだんの彼に愚痴ると、顔を真っ赤にさせて「その人はね。あなたのことを何も分かってませんよ」と明らかに怒っていた。
「腹立つわ。そいつに帽子さんの何がわかるねん」と怒気を強める様を見て、「こんなにも僕のことを考えてくれていたのか」と感じた。
しかし裏を返すと「帽子さんのことを一番理解しているのは、俺だ」という自負と執着があるようにも感じ、それが重たくもあった。
あとから聞いたのだが、彼は僕のいないところで僕への愛憎をよく口にしていたらしい。
絶賛したかと思えば「自分のことをわかってくれない!」と恨み節に転じることもあり、かなり不安定だったという。
少しでも誰かが僕のことを悪く言おうとするなら、全力で牙をむき、その人間を攻撃していたとも聞いた。
愛着不全の人間は対象を理想化したあと「理想と違った」というショックを一方的に受けて、脱価値化というこき下ろし行為を行うことがある。
これをされた方は、激しく傷つくのだが、彼もよく理想化とこき下ろしをするタイプだった。
彼の僕への思いは執着なのか依存なのか、はたまた愛情だったのか?
きっとそのどれもが正解だ。
ただし各々がべっとりと癒着しているため、見分けづらい。
彼はとても寂しがりやで、「理解されたい欲」の塊だった。
僕はそこまで極端ではないものの、似た部分を持っているので彼の気持ちは多少なりともわかるつもりだ。
結局、関係を維持するのがしんどくなり、最後は疎遠になってしまったが「彼は今、どうしているのか?」と考えることがたまにある。