見出し画像

「投影の正体」が分かった瞬間「自分の許せないこと」が明確になり、自他に優しくなれた話

僕の20代は、ほぼモラトリアムだったといってもいい。

親に養われる時期が長く、そのあと一人暮らしをするようになったが、20代の後半は、ほとんどフリーターのような暮らしだった。

ライターとして自分の食い扶持をようやく稼げるようになったのは、三十路を過ぎてから。それまでは、自分が何をして生きていけばいいのかかわらず、ひたすら模索し続けていた。

遅くにやっと自立できた僕には、妙に感情を刺激される対象があった。

それは実家暮らしの男性である。

自分よりも年が若く、実家で暮らしている男性を見ると苛立ちを覚えた。

「いつまで親のすねをかじるつもり?」「いい年して恥ずかしくないのか?」といった言葉が、心の内側から発せられる。

当時はわからなかったが、時間が経過して理解した。「これは、間違いなく投影の心理が働いている」と。

投影とは、自分が持つ自身の認めたくないことを、自己防衛のために、他の人間にその悪い面を押しつける心の働きを指す心理学用語だ。

投影と他責は、セットになることも多い。

10代、20代と上手く社会に交じることのできなかった自分への不甲斐なさが、まだ癒されない傷としてずっと内側で残っている。その結果、実家に依存している男性を見ると妙に腹が立つ。

投影に気づけると、物事の見方が変わる。

普段は感情を露にしない人が、特定のことになるとこちらへ怒りをぶつけることがあった。

当人を観察していると、とめようもない怒りといった感じで、怒っている様はとても苦しそうに映る。

こういった怒りの感情はかなり強く、ふいにぶつけられるとこちらも戸惑ってしまうし、ダメージを受ける。恐らく過去の親子関係などについて僕を通して再現しようとしているのだろう。

他者の投影を冷静に分析できるようになると、自分の投影についても理解が深まる。

憤ること、許せないこと、嫌いな相手、苦手な相手などを紙に書き出してみて、共通点を見出すと、自身の弱点や劣等感、直視したくないことが浮かび上がる。

もちろん自分の投影のメカニズムを理解したからといって、全てが楽になるわけではない。しかし、メタ認知的に外側から「あっ、また投影が働いて自分はイライラしている」と冷静に自己を観察することができれば、ブレーキがかかる。感情に飲まれることが減る。

相手へ「どうして、これをしないんだ?」と強い欲求が繰り返し起こるケースには、高い確率で投影が関与している。

投影は自分をいたわり癒せるようになると、収まることも。僕も投影を言語化できてから「人には段階と事情があるし、価値観を押しつけてもしかたない」と折り合いをつけられるようになった。

自分に厳しすぎる人、鞭打つ人ほど、投影を否認したがるものだ。

自分の弱さを認めるには勇気がいる。しかし一歩踏み出して投影の原因をしっかりと認められたあなたは、きっと自他へ優しく振る舞えるようになっているはずである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?