「自分の顔が大嫌い」という人ほど実は自分の顔が大好き⁉アソータティブ・メイティングの秘密
大谷翔平選手が奥さんの顔を公開して話題を呼んでいる。
「お似合い」「顔がよく似ている」といった声も多い。
人間は自分の顔を本能的に好んでおり、それゆえ自身と共通点のある顔を無意識選ぶことが少なくない。
似てる対象に好意を持つ現象を、アソータティブ・メイティングと呼ぶ。
アソータティブ・メイティングのメリットとして、共通する遺伝子を掛け合わせることができるので、ある要素がより強化されるというのが挙げられる。
大谷選手のように爽やかで柔和な顔の人は、無意識に自分と重なる人を選ぶのもまたアソータティブ・メイティングといえるかもしれない。
さて「私は自分の顔が大嫌い」と口にする人がいたとしよう。
ギリシャ神話に出てくるナルキッソスのように、水面に映る自分の顔をうっとりと眺めているタイプは、わかりやすく自分の顔に一際高い関心を持っているタイプである。
しかし実は「自分の顔が嫌い」と声高に述べる人も自身への関心が人一倍高い。
好きも嫌いも感情のエネルギーが強く、それだけ強烈な関心があることに変わりはない。
いわば強い自己愛が「自分好き」としてストレートに出ているか、「自分嫌い」として裏返って出ているかのちがいしかないのだ。
「自分大好き」も「自分大嫌い」も、自己に執着しすぎているのは同じである。
そのあたりの屈折した心理を、精神科医の斎藤環さんは『「自傷的自己愛」の精神分析』の中で看破している。
仮の話だが、パグによく似ている人がいたとする。「自分は容姿端麗なものに惹かれる」と普段から口にしていたとしよう。
しかしペットショップへ赴き、多種多様な犬の中から「私、この子に決めた。この子が一番かわいい」と選んだ犬が、レトリバーでもダックスフンドでもなくパグだったとしたら、その人は「容姿端麗が好み」と言いつつも、無意識では自分とよく似たパグを好ましく思っているということだ。
人間の心理はこのように複雑にできているので、興味が尽きない。